Project for Public Spacesが提唱するプレイスメイキングの5つのステップ

公共空間の計画設計、活用の支援を行うニューヨークの非営利団体、Project for Public Spaces(以下、PPS)が、「居場所をつくるための5つのステップ」(2018年1月11日公開)という記事を投稿しました。

この5ステップの記事には、PPS流のプレイスメイキングの基本的な考え方と、実践に役立つ要素がたくさん詰まっています。本記事ではPPSのWebページ上で公開された全文を翻訳し、紹介します!

ソトノバでは、過去にもPPSのメソッドを紹介しました。(パブリックスペースを「人の居場所」に変えていく! J・ジェイコブズから脈々と続く「プレイスメイキング」前編/後編)こちらもぜひ合わせて読んでみてください。

居場所をつくる5つのステップ

プレイスメイキングは、公共空間を変革するための哲学であるとともに、実践的なプロセスでもあります。

空間と地域社会全体のニーズや理想を理解するためには、その場所で暮らし、働き、遊んでいる人たちを観察し、耳を傾け、問いを投げかけることが中心となります。

プレイスメイキングプロセスは、既存の空間を改良する場合や、新しい空間を計画する場合のいずれかに使うことができます。

ただしすべての場所で状況は異なるため、必ずしも同じ順序で行われるわけでもなく、同じことが起きるわけでもありません。

PPSでは、5つのステップを用いることで場所の観察、計画、空間の具現化により多くの人々を巻き込みます。

まず、その場に関わるコミュニティと知り合い、ステークホルダーを特定することが重要です。

それから、その場所(敷地)で時間を過ごし、その空間の強みや課題だけでなく、空間を評価することが重要です。これは、場所のビジョンづくりに影響を与えます。

次に、実施は短期間の実験から始め、行われたことについての継続的な評価を続けます。最終的には、空間の長期的な改善につなげます。それ以降の成功は、継続的な観察と分析を続けるかどうかにかかっています。

1

プレイスメイキングの5ステップ。上から、コミュニティと知り合い、ステークホルダーを特定する→場所を評価し、問題を明らかにする→プレイスビジョンをつくる→短期的な実験→継続的な再評価と長期的な改善

STEP1 コミュニティに出会い、ステークホルダーを特定する

適切なステークホルダーを選択することは、その場所を良くするためには不可欠です。

初めは、対象とする場所に関する様々な人々が直面している広範囲の問題を特定するために、公的部門と民間部門の代表者を集めることから始まります。

この対話はワークプランを立てることのみならず、データ収集を可能とし、問題に関する仮説を導きます。

PPSの経験則ではステークホルダーはその空間における利害関係のみならず、互いに直接的な関係をもっていることが重要です。

大抵の場合は、居住者、隣接する場所に働いている人、文化的・宗教的または教育的な組織などが挙げられるでしょう。

その他にも、ステークホルダーのビジョンを実行できるように行政関係者が支持することが重要です。

最終的には、ステークホルダーは対話の過程で活発に意見を述べるだけでなく、プロジェクトにおいて強固で持続的なパートナーになることが成功の鍵となります。

また、この過程では次のような質問に対応することが重要です。

  1. 地域の人々は、その場所を変えることに興味があるか?
  2. 彼らは自分の能力や資金を使って何らかの形で参加する意思があるか?
  3. その場所を改善し、プロジェクトを行うために使用できる基金が存在するか?
  4. その場所を長期的に管理運営することができる組織はあるか?

STEP2 場所を評価し、問題を明らかにする

この段階では、対象となる場所がどのように使用されているか、そしてどのように改善できるかを参加者とともにその空間に焦点をあてます。

プレイスメイキング・ワークショップは、ステークホルダーの知識、直感、常識、アイデアなどを役立てるのに最も効果的なツールの1つです。

このワークショップの中心は、プレイスメイキング・ゲームであり、これはPPSが場所を評価するために開発したもので、子供から専門家まで、誰でも活用することができます。

ゲームは楽しく行いながら、参加者はお互いをよりよく知ると同時に、その場所がどのように機能するかについての洞察力を養うことができます。

プレイスメイキング・ワークショップを行う時の目標は、その場所が直面している課題を理解することです。

プレイスメイキング・ワークショップの開催にあたっては、非営利団体や地域の団体がその事業のコーディネートを行うのが最も効果的です。

そのような組織化戦略は、仮に地方自治体が実施した時よりも、より多くの地域の人々の参加を確実にしてくれます。

とは言っても、ワークショップに行政職員が参加することは、プロジェクトの成功には必要不可欠です。

成功するワークショップは、目標の見直しとそれに続いて対象場所を訪問からはじまり、その間ステークホルダーがグループに分かれてプレイス・ゲームをおこない、よりいっそうその敷地のことを熟知します。

その後、各グループは残りのステークホルダーに報告を行います。結果は、その空間のための仮のビジョンの話し合いや、パートナーになってくれそうな人たちとのブレーンストーミングに活用します。

このプロセスの間では、限定的な焦点をあてたグループもでてくるかもしれません。

典型的なワークショップは、4〜6時間ほど続きます。結果は、出席できない人にも報告する機会があることが望ましいといえます。

2

アメリカ、デンバーのユニオン駅では、場所を評価するためにプレイス・ゲームを行いました。

STEP3 ビジョンとマネジメント戦略

この段階では、プレイスメイキング・ワークショップから出された問題や気づきに基づいて、プレイス・ビジョンを策定します。

敷地に対する建築設計とは大きく異なり、将来の空間の使い方のためのビジョンです。

ビジョンには、次の事項を含めます。

  • 目標を示す
  • プレイス・ゲームの結果をもとに目標をさらに精査したり、修正する
  • その場所をどのように使用することができ、ステークホルダーが関与するかを明確に定義する
  • 場所の「特徴」を描写する (昼や平日に賑わう場所があれば、静かで落ち着いた場所もある)
  • 潜在的な、人々のよりどころを特定する(例えば、カフェ、庭園、遊び場など)
  • 人々の活動を配置し概念的な設計図をつくる

プレイス・ビジョンを描くと同時に重要なことは、その後のマネジメントをするための計画です。その場所を活発に、維持された状態を保つためには、マネジメント組織が必要です。

マネジメント組織の結成時期など、時間的な条件はさほど問題ではありませんが、パートナーとして一緒に運営していく組織がないことで、プロジェクトに遅れを生じさせるわけにはいけません。

3

オーストラリア、パース州の文化センターのプレイスメイキング・ワークショップでは、このようなプレイス・ビジョンを作りました。

STEP4 短期間の実験

プレイスメイキングの過程で最も重要なのは「実践」で、ビジョンを行動に移すことです。

LQC(手軽にLighter、速くQuicker、安くCheaperの頭文字)とも呼ばれますが、これは素早く短期間で、しかも多くの費用をかけずに短期間の変更を行うことができます。

これらのアイデアは、プレイスメイキング・ワークショップの結果としてよく出てくるでしょう。
プロジェクトの継続期間は、ストリート・フェスティバルなら数日から、路地を広場に変えるなら数ヶ月かかるというように、さまざまです。

LQCは時間、お金、労力のかけ方を変えることで応用が可能です。投資額の程度を変えながら、永続的な変化をもたらすために反復的に活用することができます。

使い勝手を向上させる施設例:可動式のイス、風景づくりや園芸の飾り付け、卓球やイタリアのボッチェゲーム、季節限定プール、仮設トイレ、標識、他の活動と併用できるドッグラン、遊べる噴水、ライブラリーまたはミュージアムのキオスク

企画例:季節ごとに変わるマーケット、アウトドアでの映画上映、トーナメント式のスポーツ、地元の演奏家によるコンサートシリーズ、フードフェスティバル、ヨガ教室、自転車修理店、氷の彫刻コンテスト

簡易な開発例(施設など):輸送用コンテナを利用したカフェやステージ、小売店や食品販売店、ビアガーデン、臨時スポーツ用具レンタル店、アイススケートリンク、様々な規模の建物

4

100人以上のアーティストがデザインしたベンチはスイス、チューリッヒの中心市街の至る所におかれています。ビーチボールとスーツケースもベンチの一部です!

STEP5 継続的な再評価と長期的な改善

公共空間のプロジェクトを、いつか終わるものだと思うのは簡単です。

「LQC(手軽に、速く、安く)」の実験は、プレイスメイキングの過程を飛躍的に進めることができますが、完全に終わることはありません。

すばらしい場所をつくることは、進行の過程そのものです。すなわち、プロジェクトの初期の段階で、日々、異なる時期、異なる年ごとにどのように使用されているかを把握するといった場所の継続的な評価チェックをすることが重要です。

PPSが考える良い公園では、長期計画の一環として、スタッフが定期的に場の評価チェックをしています。毎日している公園もあるほどです!

彼らは「壊れた」ものを探すだけでなく、常にどのような場所が使われるかに焦点を当てています。この情報によって、場所は蘇り続けます。しかし、それと同時に、その場所を管理するための、より長期的な計画が必要にもなります。

5

ニューヨークのブライアントパーク

 

ステークホルダーがプロジェクトに関わり続けることは、プロジェクトの成功にも、失敗にも繋がることがあります。

その場所のビジョンが常にコミュニティの目標を反映しているかを確かめることは、プロジェクトの過程で、非常に重要です。

変化する状況とニーズに応じた管理の計画を適用することで、その場所が十分に愛され、常時使われるようになります。

必要に応じて、専門家やコンサルタントが特定の、残された課題の対処に加わることは有用ですが、最も重要なのはメンテナンスや場のプログラムを行うスタッフの協力です。

しかし、外部の専門知識を導入する前に、新たな参加者を招き、新しい「LQC(手軽に、速く、安く)」のプロジェクトを試してみると、問題解決に挑むための創造性と地域のノウハウを得ることができるでしょう!
(以上が訳文。※紹介のため一部表記を補っています。)

 

以上、PPSのノウハウとアイデアがたくさん詰まったプレイスメイキング実践方法の紹介でした。

基本的な内容ながら、特にプロジェクトの初動期に重要な考え方や手法をまとめています。

プロジェクトを計画するとき、活動途中で方向性に迷ったときなど、各時点での成果を再確認するためのガイドラインとして活用することもできそうですね。ぜひ参考にしてみてください!

(ALL Photos by PPS Website)

The following two tabs change content below.
水野 久仁香

水野 久仁香

名古屋出身/国内のまちづくりコンサルタント社員/学生時代はインドネシア留学の経験から、カンポン(「下町」という意味合いを持つ密集住宅地)にてフィールドワークを実施。主に河川敷のカンポンにおける清掃活動を通して、住民が行政を巻き込み、リバーフロントの整備を進めていくプロセスに注目し、研究を行う。近年は名古屋圏のオープンスペースの整備や活用事例にも関心あり。