「まち保育」はひとと地域を育ててくれる!?|ソトノバTABLE#24レポート

今年最後の開催となった「ソトノバTABLE」。今回のテーマは、「まち保育」。今年5月に『まち保育のススメーおさんぽ・多世代交流・地域交流・防災・まちづくり』を出版した、横浜市立大学准教授の三輪律江さんと子どもの未来サポートオフィス代表の米田佐知子さんをお招きし、「ソト」をキーワードに子どもの育ちや子どもの居場所づくりについて考えました!

汐留でまち保育を語る意味

今回、ソトノバTABLEの会場となったのは、オフィス街として知られる東京・汐留エリア。たくさんの高層ビルのなかの一つ、ソフトバンク本社の25階社員食堂で開催されました。このエリアを知っている人であれば、今回のテーマ「まち保育」とはずいぶん接点のない場所だなー、と感じる人も多いのではないでしょうか。

本来、子どもたちが居住するエリアを中心に議論されてきた「まち保育」。しかし職住分離され【働く】という機能に偏ったこのエリアで、「まち保育」の議論をしたらどうなるのか?何か新しい視点や糸口がみつかるのではないか?というところから、実際にこのエリアに社を構える企業が連携して取り組んでいるLifeWorkS projectに参画する「しおどめまち保育プランナーズ」の活動の一環としてご協力いただき、開催が実現したというわけです。

昼間はソトで働きながらも、お家に帰ればパパ・ママという子育て当事者の方にも多く参加いただいた今回。早速、トークの模様を追っていきましょう!

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子育て当事者の皆さんも多く参加!

異年齢交流のないアウェイ育児と制度化が及ぼしたスキマ

まずは、米田さんより日本における近年の子育て事情や、子どもの居場所についてのお話。米田さんは、神奈川県を中心に子育ての現場を回り、子どもと地域のつながりを側面から支援する活動をおこなっています。

―ソトで遊ぶ子どもの声はうるさいか?―

近年、さまざまな世論を巻き起こしているこの問題。結果的に規制だらけの公園を生んでしまったり、ソトで子どもを遊ばせるのをやめてしまったりと、内向きな子育てを生むきっかけとなっています。これに問題意識を持つという米田さんは、そんな閉じている現代の子育てから一遍、まちに出て、出会い、ひらき、つながるといったサイクルを回していくことこそ「まち保育」だといいます。

そもそも近年みられる育児スタイルは、子どもからみた「親」「先生」「友達」の三角関係だけで完結している、いわゆる「アウェイ育児」。実際に、異なる年齢や属性の人たちと過ごす子どもの割合は1割も満たないというデータも出ており、親や先生、友達といった縦や横の関係だけでなく異年齢が多様にあつまる地域との「斜めの関係」が大切ではないかと話します。

また、保育の分野であらゆるサービス化が進む現代では、個人対サービスという関係だけで成り立ってしまうため、人と人とのつながりが希薄している問題も指摘します。様々なコミュニティとつながりをもつことで、状況や気分に応じてどこを利用するか、どこに遊びに行くのかを使い分ける。そうすることで、ちょっとしたストレスから開放され、より豊かな子育てを実現できるのではとお話してくださいました。

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子どもの未来サポートオフィス代表・米田佐知子さん

知らないものはつくれない!だからこそ大事な幼い頃の経験!

では、このような地域のつながりを大切にした子どもの居場所は、どのようにつくっていくと良いのでしょうか?後半は、米田さんが関わってこられた事例とともに子どもの居場所づくりのヒントをお話いただきました。

子どもの居場所の一つに、近年全国で拡がる「こども食堂」があげられます。「こども食堂」とは、地域のボランティアなどの運営により、放課後に子どもだけでも食べに来られる食堂です。また、自然体験活動や冒険遊び場(プレーパーク)など、ソトでの活動も子どもの居場所になっています。最近では、TOKYO PLAYによる「とうきょうご近所みちあそび」を筆頭に、みちを舞台にした子どもの居場所も増えています。建物に比べ、気軽に入り、自分の好きな時に抜けられるソトは、居場所の敷居をグッとさげてくれるのです。

米田さんは、このような「異年齢・多世代が大勢で集った記憶」を子どもたちが社会的相続として持っておくことが大事であるといいます。知らないものはつくれない。幼いうちに異年齢でのコミュニティを経験し、そういったコミュニティの組成が可能であることを知ることができるのが「まち保育」なのです。

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子どもの居場所について、多くの事例と共に紹介いただきました

未就学児の行動範囲からみる「まち保育」のヒント?

続いては、子どもの居場所としてのまちのあり方などを研究されている三輪さんより、まちなかの空間的切り口からまち保育の可能性についてのお話。

未就学児の親子は普段どこへ出かけているのでしょうか?その際の場所を選ぶ基準とは?三輪さんによる調査によれば、1歳未満と1歳以上でその傾向が二分されるとのこと。理由は、1歳未満では親のペースで移動できますが、1歳以上になると子どもが歩けるようになり子どものペースで歩くことになるから。

注目すべきは、1歳以上の未就学児を持つ親子の回答。子どものペースになることで行動範囲が一気に縮まり、「近いから」を理由に自宅近くの児童公園を利用する親子の割合が高くなっています。

未就学児の行動範囲は小学校区より一回り小さい程度なので地域との関係性は強いといえます。よって、こどもの成長とともに地域との関係性は弱まっていくのは当然といえます。しかし、その関係性をいかに繋げておくかが地域の将来を考える上で重要ではないかと三輪さんは指摘します。

さらに、未就学児の生活圏とアクティブシニアの行動範囲が近似していることにも着目されており、高齢者と未就学児親子との関係づくりに「まち保育」のヒントが隠されているようにも感じました。

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横浜市立大学准教授の三輪律江さん

保育園は、地域施設をフル活用するのが得意だった!?

このように家庭内だけでなく地域全体で子育てを考えていく現代において、子育ては当事者だけではなく様々な分野や立場の人も考えていくべきテーマだと三輪さんは指摘します。しかし、「地域」で考えるとなったとたん、「誰が?」、「どれくらいの範囲で?」というのが曖昧になってしまうのが難しいところ。そこで注目されるのが、保育園などの保育施設です。

多くの保育園で日常的に行われているお散歩。その際に作られているのが、お散歩ルートや見どころポイントが書き込まれた、保育士さんによるオリジナルの「おさんぽマップ」です。

電車がよく見える橋。この家のお花がきれい。あの家の窓際にある可愛い置物は子どもたちに好評。などなど…

子ども目線でまちなかの見どころが書き尽くされており、普通の住宅地でさえ地域資源がこんなにもあることに驚かされます。こういった地域の施設のフル活用は、特に都心部のビルの一角にある園庭を持たない保育園で実践されているようです。

一方で、地域資源は活用していても、保育園と地域住民の関わりが薄く繋がりがないのが現状です。三輪さんはそれを課題に感じており、保育園と地域住民が交流できるワークショップを企画・実施し、地域全体が子育てに関心をもてるようにする取組みもおこなっています。

このように保育園と地域が繋がることで、子どもだけでなく地域の人もまちで育ち、育てられ、共に暮らす土壌の構築が、結果的にまち自体を育てていくことになるのではないかと、「まち保育」がもたらす展開が語られました。

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実際に三輪さんが保育園児と一緒にやってきたワークショップの様子も紹介

地域と保育をつなげる、はじめの一歩とは?

後半は、飲食を交えながらクロストーク。ソトノバ副編集長・三谷の進行のもと、参加者から寄せられた質問シートに沿って議論が交わされました。

実際に子育て当事者の方の参加も多かった今回、「具体的な行動に移していくためには何から始めればいいのか?」といった、より実践的な質問が上がったのが印象的でした。

米田さんは、まずは友達など身近なコミュニティで小さく・ユルく始めるのがポイントではないかと話します。楽しいということがなにより大切で、小さな成功体験が重ねていくことで、コミュニティの輪も自然と拡がっていくのかもしれません。

さらに三輪さんからは、商店街の空き店舗を利活用した親子の集いの場や保育園の空間の設え方の実例を紹介。親子目線の利用勝手や、親同士のコミュニティ醸成を意識した「スキマと境界のデザイン」をつくり込むことが大事であると指摘しました。コミュニティを醸成させるためにはソフト整備だけでなくハード整備も仕掛けることの大切さに気付かされました。

「まち保育」というキーワードから、さまざまな視点で議論が展開していった今回。「保育」が地域を育ててくれるということに気づかされた一方で、まだまだ、地域と保育の現場の接点が小さいことにも気づかされました。まずは、地域全体で子育てをしていくことを前提に、あらゆる立場の人が集い関われる場をつくっていくことが必要といえるかもしれません。

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会場の参画者も交えてのクロストーク!

「まち保育」からみる子育てとソトの関係 | ソトノバ TABLE #24

イベント概要

日 時: 2017年11月30日(木)19:00-21:30(開場 18:30-)
会 場: 東京汐留ビルディング 25F Festa(ソフトバンク株式会社内)

東京都港区東新橋1−9−1

主 催: ソトノバ
FACEBOOK: イベントページ

タイムライン:

18:30- 受付開始・会場
19:00- ソトノバイン
19:10- イントロ・ソトノバ紹介
19:20- ゲストトーク

①三輪律江氏(横浜市立大学国際都市学系まちづくりコース准教授)

②米田佐知子氏(子どもの未来サポートオフィス代表)

20:25- クロストーク(コーディネーター:三谷繭子/ソトノバ副編集長)
20:50 全体フォト
20:55 交流会
21:30 終了
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荒井 詩穂那

荒井 詩穂那

ソトノバ副編集長/(株)首都圏総合計画研究所研究員/NPO法人・ハマのトウダイパークキャラバン実行委員会メンバー  神奈川県横浜市出身。行動派。現場派。学生時代は、近代における東京・大阪・横浜の公園計画や小広場空間の採用について研究。現在は、都市計画コンサルタントとして働く傍ら、休みの日には地元横浜で、公園等の活用プロジェクトを実施。