ストリートウィーク特別企画! これからの日本のストリートの未来をつくろう! 【ソトノバTABLE#20 レポート後編】

9月23日に開催した、ソトノバTABLE#20レポートの後編です(前編はこちら)。セッション2では活用事例から考える日本のストリートのこれからというテーマで4人のゲストの方々に事例を紹介していただきました。

セッション3ではゲストの方々とオーディエンスみんなでワークショップを実施し、これから先のストリートの利活用について話し合いました。

豊かな生活と雇用をもたらすロンドンのストリート・マーケット

1人目のスピーカーは、ソトノバコラムニストとして「ソトの場」に関わる鈴木美央さん。鈴木さんは建築家である傍ら、ロンドンに住んでいた頃の経験から、ストリート・マーケットによって地域の住環境の質を高める取り組みを実践しています。

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Yanasegawa ink代表の鈴木美央さん。ストリート・マーケットの魅力を建築的視点で語ります

ロンドンの多様なストリートアクティビティの中で鈴木さんが一際興味を持ったのが、ストリート・マーケットでした。その魅力を学術的に証明するため、博士課程ではストリート・マーケットを研究して論文にまとめました。

研究結果として、ストリート・マーケットには生活の質、経済、環境という3つの項目において効果があり、これらは持続可能な開発が掲げる3つの課題と一致することがわかりました。つまり、ストリート・マーケットは地域の持続可能性を担保するために必要不可欠な存在だと言えるのです!

同じ人が同じ場所でストリート・マーケットを開催することで、コミュニティの形成に大きな役割を果たします。これが生活の質を高めるのに大きく寄与するのです。

また経済にも大きな影響を与えてます。イギリスでは7300もの雇用を産んでいることが分かっています。イギリスを代表するスーパーマーケット「TESCO」もストリート・マーケットが起源となっているそうです。

ストリート・マーケットは、地域の中に密着しているので車依存の軽減する、ムダなパッケージがないなど、環境にも優しい消費を促しています。建物の環境性能を評価する「LEED」の中も、ストリート・マーケットの重要性を認めています。

ストリート・マーケットが、生活の質にとっても、経済的にも、そして環境にとっても良い影響があるということがよく分かるプレゼンテーションでした。

「道路を遊べる場にする」 英国と日本での実践

2人目のスピーカーは、一般社団法人TOKYO PLAY代表の嶋村仁志さん。「すべてのこどもが豊かに遊べる東京を」という目標を掲げ活動しています。

嶋村さんもまた、イギリスでの学びを現在の活動につなげており、ロンドンでのストリート活用事例や、東京での現在の活動をシェアしました。

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一般社団法人TOKYO PLAY代表の嶋村仁志さん

まずは100年近く前のイギリスの首相、デイヴィッド・ロイド・ジョージの「子どもが家を出て最初にコミュニティに求めるものは遊びである。このことを疎かにするコミュニティは、市民の心と体に深く恒久的な傷を負うことになるだろう」という言葉を紹介。100年後の今でも、この言葉は有効であると語ります。

遊び場が減っているイギリス国内で、「遊び場」ではなく「遊べる場」をつくる取り組みがたくさんあります。中には自治体が主導する取り組みも。住みたくない街ワースト3位に選ばれてしまった市が始めたのは、1月に2時間だけ、車を通行止めにする通りを設けるというものでした。すると、この制度を利用する通りが次々に現れたのです。

大人にとっても遊べる場にし、大人にも遊びも促すことで、子どもの遊びを見守る大人の目を育てようという取り組みも進んでいます。

プレゼンの後半は、「とうきょうご近所みちあそび」のプロジェクトを紹介。近所の道を使って子どもたちが遊べるようにすることで、コミュニティの形成を促し、子育てを間接的に支援しようという取り組みです。

注目しているのは、東京都内840カ所ほど残る「遊戯道路」。これらを積極的に活用することで、子どもが遊べる場所を実験的につくっています。子どもの姿が見えることで大人同士もつながり、コミュニティ全体を育てることになります。地域の人々が持っている知識や技術を少しずつ貸し合うことで、地域ごとに独特な遊びの空間が生まれるのです。

衰退した地域にぎわいを取り戻すソウルと宇部での取り組み

3人目のスピーカーは、山口大学大学院創成科学研究科助教の宋俊煥さん。ソウル市初のトランジットモールと、山口県宇部市の若者クリエイティブコンテナについて発表しました。

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山口大学大学院助教の宋俊煥さん

トランジットモールは歩行空間の整備方法のうち、公共交通のみを導入する歩行者優先道路で、日本国内には実験的なものも含めると20ほど存在します。

ソウル市の延世路で実践したトランジットモールでは、歩道の幅を広げたり、屋台群を常設のキオスクに変更したり、イベントスペースを設けたり、デッキを敷いて憩いの場をつくったりしました。

プロジェクトの背景は、もともと交通の結節点でありながらも現在では衰退を迎えてしまった地域を、トランジットモール化することで改善しようというもの。公共交通専用地区という地区に認定されることで国からの補助金を受けることで、コスト面のハードルをクリアしました。

トランジットモール化が可能になったのにはもう1つ大きな理由が。それが、商店街のメンバーによって構成された組織の存在でした。屋台を経営する人々が反対の声を上げたときも、この組織が中心となって解決策を提案しました。

フィールドは変わって、次の事例は山口県宇部市で宋さんも関係して取り組みを進める、「若者クリエイティブコンテナ」を中心とした市街地再編プロジェクトの紹介です。

空き家と駐車場が増える地域に、多世代交流スペースとして若者クリエイティブコンテナを設置。宋さんや山口大学助教の小林剛士さん、そして学生6人と一緒に運営しながら、若者の力でまちなか再生を試みています。

現在は、駅前にある飲み屋街と若者クリエイティブコンテナをつなぐ道ににぎわいをもたせ、周辺の土地の価値を少しずつ高めていこうという取り組みをしています。市が購入した空き家の活用方法を学生が提案し、地元の人々も一緒になって街の未来を考えています。

道路の利活用からエリアマネジメント団体を設立

最後のスピーカーは、ソシオミュゼ・デザイン代表の田中裕人さん。一般社団法人蒲田東口おいしい道計画事務局担当理事を務めている田中さんが、その事業の内容を紹介します。

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ソシオミュゼ・デザイン代表の田中裕人さん

「蒲田おいしい道計画」とは、1990年代に全国で取り組みが進んだ中心市街地活性化事業の基本計画に基づき、大田区で計画された旧逆川道路の利活用実験イベントに端を発します。

2010年代に入って電線地中化事業の具体化をきっかけに、飲食店が多いことが特徴のこの道のアイデンティティを継承するため、1990年代に計画されたおいしい道計画を復活させることに。再び委員会を組織して、提案をつくって自治体に提案しました。

最初から商店街の人々だけでこの通りをマネジメントするのは大変だということで、現在は任意団体を設立して運営することになりました。

この組織は現在、一般社団法人蒲田東口おいしい道計画事務局へと成長し、通りだけでなく地域一帯を面的にマネジメントすることになりました。道路を貸し出せるようにし、路上での様々な活動を取り仕切ります。

事例紹介の最後に、制度が前に進むためには、行政側と民間側両方から働きかけて息をそろえてやらなければいけないと述べました。また、実施した取り組みの効果を注意深く測定するなど、持続的に成長させていくためのポイントも共有しました。

「人工芝はもういらない」

クロストークでは、セッション1の発表者も含め6人全員のスピーカーの方が登壇しました。

多様性、日常、多世代、人口減少、地方と都心部、メインストリートと路地、線から面へ、業界超と、これまでのプレゼンから8つのキーワードを抽出し、時間の許す限りそれぞれのキーワードについて議論しました。

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登壇者全員が参加したクロストーク

特に注目を集めたのが、嶋村さんの「ストリートでイベントをするときにお約束の人工芝は、もういらないんじゃないか」という一言でした。

人工芝があると、それだけでなんとなく場が完成したような見た目になることを懸念。仕掛け人がアイコンのように持参するストリートグッズよりも、極力地域の人々が持ち寄ってつくり出されるようなストリートを目指したいという意見に、多くの来場者がうなづいていました。

ストリート宣言から始まるワークショップ

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ストリート宣言を発表し合いながら自己紹介

一方的に終わらないのがソトノバTABLEの醍醐味。ゲストのトークを踏まえて、参加者全員でワークショップを開催します。

最初に、「あなたにとってストリートとは?」と書かれたオレンジの枠の中に、参加者それぞれが意見を表明。このストリート宣言を使って各テーブルで自己紹介してもらいました。

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4つのグループに分かれてワークショップを実施

ワークショップは4つのグループに分かれ、大きく3つの項目について話し合いました。3つの項目は、ストリートの課題は? これからのストリートの在り方とは? 実現するためのアクションは?です。

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各班に話し合った内容を発表してもらい、みんなのストリート宣言を集計し、ストリートの課題や未来を共有しました。

それらをもとにソトノバ編集長の泉山塁威さんが、これからのアジェンダとして整理しました。

7つのアジェンダ
1. 地域に応じてモデルを整理し、ストリートに関する取り組みを知る場をつくる
1. 人工芝を置くのをやめる。地域の個性や特徴を活用した利活用を。
1. 会議の前に、ソトでやってみる
1. イベントではなく、日常に落とし込む
1. プレイヤーを掘り起こす
1. 何かやらなければならないの? >>自らストリートに居場所をつくる
1. 行政や個人が担わなければならないリスク・保障の必要性(ソトノバ保険?) >>アーバ二ストを守る

ワークショップが終わった後も、懇親会「ソトノバ・ドリンクス」の場で延々と意見は交わされました。登壇者もオーディエンスも分け隔てなく、ストリートについて、今回のソトノバTABLEについて、お酒を飲みながら話しました。

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イベントのための特製ディナー

ケータリングは「Food unit GOCHISO」による、ストリートをモチーフにデザインされたスペシャルフード! 車をみんなで食べて、豊かなストリート空間をつくるという願いが込められています。

記念すべき20回を迎えたソトノバTABLE。これから先も、ソトの活用を活発にするために様々な人と出会う場を作っていきます!

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ソトノバTABLE20回を祝して、乾杯!

All photos by Nozomu ISHIKAWA

ストリートウィーク特別企画! これからの日本のストリートの未来をつくろう! ソトノバtable#20

日時 2017年9月23日(土)13:30-19:30
会場 東京都目黒区目黒2-11-3 印刷工場1階
主催 ソトノバ、ストリートウィーク実行委員会
タイムライン
13:45- イントロ
14:15- 【セッション1】日本のストリートの系譜〜ストリートの歴史と法制度を知る〜
1)日本のストリートをふりかえる
三浦 詩乃氏(横浜国立大学助教、ソトノバライター)

2)まちづくりと街路の新たな展開
渡邉 浩司氏(国土交通省都市局 街路交通施設課長)

3)クロストーク

15:10- 【セッション2】活用事例から考える日本のストリートのこれから
1)ロンドンのストリート・マーケットからみる日本のストリートのこれから
鈴木 美央氏(Yanasegawa ink代表、ソトノバ・コラムニスト)

2)遊びをキーワードにしたストリート活用の可能性
Playbourhood Street Tokyo〜とうきょうご近所みちあそび
嶋村 仁志氏(一般社団法人TOKYO PLAY 代表理事)

3)韓国ソウル市初のトランジットモール(延世路)と地方都市・宇部のストリートの実践活動
宋 俊煥氏(山口大学大学院創成科学研究科助教)

4)蒲田おいしい道計画
田中 裕人氏(ソシオミュゼ・デザイン株式会社 代表取締役、一般社団法人蒲田東口おいしい道計画 事務局担当理事)

5)クロストーク

16:30- ストリートワークショップ
17:30- ストリート・パーティー/グループフォト
19:30 クローズ
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矢野 拓洋

矢野 拓洋

建築家/研究者/renu+設立者/IFAS設立者/修士(建築工学) デンマークで建築を中心に活動中。立ち上がった建築単体のみでなくそのデザインプロセスやデザイン教育のあり方、建築周辺の環境について研究しています。