神田とパブリックスペース・アクティビティの未来を共に語ろう!神田警察通り賑わい社会実験報告会 #レポート

2017年3月13日、東京・共立女子大学の講堂にて開催された神田警察通り賑わい社会実験の報告会に行ってきました。メインゲストとしてデンマーク・コペンハーゲンよりGehl(ゲール)事務所のデイビッド・シム氏が登壇し、2016年11月に行われた「神田警察通り賑わい社会実験」(主催:「神田警察通り賑わい社会実験実行委員会」)のプロセスと調査結果をふまえた考察や社会実験を通して彼自身が感じた東京のまちのこと、これからの改善点について聞いてきましたので報告します。

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講演会は昼と夜の2部制。昼の部には約100人の神田のゆかり・関心のある人たちが集まりました。Photo by UR都市機構

Why Kanda?なぜ神田なのか?

話はまず、なぜ神田の賑わいが大切なのか、という理由から始まりました。 神田は現在、日本国外からも非常に文化性の強い地域として注目されているそうです。

歴史と文化のあるまちだからこそ、そこに住む人たち、訪れる人たちの様々なエネルギーが集まっている場所です。しかし一方で、これらのエネルギーの向かう方向は現在バラバラになっています。これらのエネルギーのベクトルを揃えることがより良い街を作り出すキーではないか

とデイビッドさんは切り出します。

データの数字が教えてくれた神田の街並み

11月に実施したアクティビティ調査の目的は「現在の神田の現状をゲールの調査手法を導入し、課題を明確にすること」、「そこから今後の改善策を見いだすこと」。報告会では調査・結果・課題と順を追ってデイビッドさんが解説をしました。

アクティビティ調査の報告

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都市の中の人の行動もデータをとることが第一歩。これで街のどこに人が集まっているかがわかります。Photo by UR都市機構

ゲールが独自に編み出し発達させてきた、人の行動を分析する手法を用いてアクティビティ調査を実施しました。共立女子大学、慶応義塾大学、東京大学の学生も調査に参加し、各ポイントにおいて4つの調査を実施しました。

1.歩行者・自転車・車のカウント

数字のデータを分析をしたり、課題や結果を実証するのに大変役立ちます。

2.滞在型アクティビティの調査/空間の質に関する調査

常に忙しい街・東京では人が行き交っているが、ある空間に滞在している人は少ない。なぜ人が滞在するのかを理解することは、魅力的な空間の本質を知ることにも繫がります。

3.ファサード調査

人を惹き付ける街並み(=ファサード)/魅力の少ない街並みが、エリア内にどのように分布しているかを分析・把握します。

4.学生やステークホルダー(利害関係のある人)へのインタビュー

実際に住んでいる人の意見を知ることはとても重要です。 これら4つの調査の結果を分析し、どれくらいの人数の、どんな属性の人が、どこに・なぜ集まっているのか、また集まっていないのかを把握します。 加えて、実際にパークレット風のアクティビティ空間を神田警察通りに1日だけ実験的に設置し、その空間での人のにぎわいや、神田に関する質問を通してそこにいる人がどのように街をみているのかを調査しました。

調査結果の報告

上記の調査をふまえ、報告会では大きく5つの結果報告がされました。

まず1つ目は「人の量」についてです。

歩行者の量の観点から見ると、平日の歩行者の数が最も多いことがわかりました。またポイントごとに人数をカウントした結果を地図上に表すと、人数の多い場所と少ない場所が顕著に現れました。このことから、人数の多い場所から少ない場所にどう人を呼び込んでいくか、という課題の発見につながりました。

2つ目は「まちなかの男女比の格差」です。

ビジネス街であることも影響し、神田では特に男性の数が女性より圧倒的に多いということがわかりました。この結果は、まちなかのパブリックスペース自体も男性向けで女性があまり受け入れられていないと感じる、過ごしにくい環境になっているのではないかという疑問が生まれてきました。

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普段あまり意識することの無かったパブリックスペースでの男女比も可視化されると改めて考えさせられます。Photo by UR都市機構

3つ目は「バイクレーンの必要性」です。
神田に限らず、日本ではまだまだ歩道を走る自転車が多いです。自転車と歩行者に優しいまちづくりのためにも自転車専用レーンを作りたいところですが、一方で、神田で自転車を利用する人は近隣の会社に勤める人の仕事上での利用が主で、休日になると自転車利用者の姿が消えてしまうため、この利用者の少なさが自転車専用レーン設置に向けての難点になり得ることが指摘されました。

4つ目は「8~9歳児(就学児)」の少なさです。
調査の結果、神田には未就学児は見受けられたものの、小学生以上の就学児がほぼ0に近い程にいなかったそうです。これは子供を持つ家族が子供の就学を境に「より子育てに向いた街に引っ越す」という選択をしているからです。言い換えると、神田は現状では子育てに向かない街であるという結果になります。

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「この写真の彼は本当に貴重な存在」とデイビッドさん。視察中に神田で実際に見かけた唯一の就学児童だったそうです。Photo by UR都市機構

5つ目は「空間の質」/「ファサードの質」です。
ゲールの調査手法には「12の評価基準」と呼ばれる空間の質を判断する12個の項目があります。質の高い空間にはより多くの人が滞在する、にぎわう、と考えるからです。また、通り沿いのファサードに関しては、「活発」から「不活性」まで5段階で評価する手法があります。デイビッドさんは、

その中から神田に関して、ファサードの質を改善するべきである

と指摘をしました。

今回のファサード調査の結果、神田警察通り周辺の特に南西側エリアでは、約85%のファサードがあまり魅力的ではないという結果に。駐車場が多いことやオフィスビル間の簡素な路地がヒューマンスケールではない、あまり人を快く受け入れていない空間を作り出していること

を説明しました。

またデイビッドさん自身が神田の街を見てみて、週末には人が少なくなるものの、ジョギングを楽しむ人たちの姿を目にし、「やはり人々は神田に楽しむための”なにか”を求めている」と感じたそうです。
そして、パブリックスペースに関しては、ベンチの少なさを指摘しました。また、テラススクエアや公園といったパブリックスペースが主に使われていますが、そこにも女性の姿はあまり無く、女性に男性向きの空間であると本能的に感じさせてしまうところが改善点であると言います。

エンゲージメント・実際にコミュニティと関わってみて

昨年11月の社会実験にて使われたパークレット的空間を用いての社会実験の様子。Photo By Takuya Wakabayashi

パークレット風のツールを用いた神田警察通りでの調査では、通りがかった方々と理想の神田の風景について写真を使った簡単なアンケートをとりました。それを通してわかったことは人々がより多くの「緑」と「あそび」を求めているということでした。

理想の神田について訪れてきてくれた方のコメント。青が男性でピンクが女性。ここでも男女比が実はあったんですね。Photo by Takuya Wakabayashi

また、初めに行った人数のカウント調査では、この実験を行った神田警察通りの周りには普段全く人が来ないことが判明し、今後人を惹き付けるしかけづくりが必要であることがわかりました。 そして、デイビッドさんは、この社会実験の失敗点として天気が晴れているにも関わらず、道の日陰側にツールを設置してしまったことを挙げました。11月の寒空の下ということもあり、訪れた方々も少し寒そうにしていたそうです。しかし、このような失敗例に気づくことができるのも、パイロット的に行い簡単に取り付け・取り外しのできる社会実験の良いところであります。

今後の課題は?

これからの神田の改善点として、デイビッド氏は街全体と道路空間において彼の意見を会場と共有しました。 まず街全体の課題としては、「水辺の活用」、「緑化」、「神田らしさ」があります。 首都高速沿いに流れる水辺をより魅力的な場所にすることで街全体に水辺ならではの魅力や活気が生まれます。また、住民からの声もあったように緑のスペースはまだまだ増やすことができます。そして、開発をしていくことで本来の「神田らしさ」を失うことなく、よりらしさを発揮できるような開発を行っていくことが今後の課題です。 それから道路空間においては、神田における3つの道路のタイプ別にアドバイスがありました。

8m幅の道路 駐車場が多く、ファサードがつまらないのがこの道路の特徴。駐車場をParkletの様な可動式・暫定的な空間に変えることが新たな空間の有効的な使い方に繫がります。
10m幅道路 すでに小売り店やレストランがあり、それなりに人が行き交う道路。ここでは更にお店の前等に座れる場所を設置することで人が通り過ぎるだけではなく滞留空間を作り出すことができます。
20m幅道路 車通りがあるものの、あまり有効活用されていない道路。道自体をシャンゼリゼの様に人々の目的地にすることが目標。日なたに人々が集まれる、社交的なアクティビティを置くことが考えられます。そして実際の交通量を減らすのではなく「交通量が多い」というイメージをなくすことが必要です。
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今後、ストリートにおいて実施可能な社会実験の例をいくつかあげるデイビットさん。Photo by UR都市機構

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ニューヨークのプラザプログラムやパークレットも例にあがっていました。Photo by UR都市機構

2015年からゲール事務所の協力のもと社会実験を開始し、現在はテスト段階であるとデイビッドさんは言います。

これから2019年にかけて「計測・テスト・改善」を社会実験を通し、繰り返していくことで2020年には人々の為の、常設的なまちづくりの実施を目指していってはどうか?という提案がなされました。

話の最後はまたWhy Kanda?にもどります。

「神田には独特の文化、そしてサステイナブルで魅力的な人々の日常が詰まっています。 さらに神田に住む人・訪れる人が街の魅力を感じることのできるようなまちづくり、そして8~9歳の子供が神田の街に住み続け、神田で大人になって行くようなまちづくりをしていきましょう」

とデイビッドさんから温かいメッセージがありました。 そしてYOU ARE MAKING KANDA!(みんなで神田のまちをつくる)という言葉でデイビッドさんによるプレゼンテーションは幕を閉じました。

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デイビットさんの報告会の後には意見交換会がありました。1人3枚のポストイットに質問、理想の神田のまち、今後のまちづくりで取り組んでいきたいことなどを書き込んでいきました。Photo by UR都市機構

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それらを貼っていくと? Photo by UR都市機構

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こんな感じに!(これにホワイトボードが更に4枚ほど!)Photo by UR都市機構

その後の意見交換会では、神田に住む町会の方々や神田にある会社に勤めている方々から意見を伺い、会場で熱い議論が交わされました。

なかでも特にキーワードとなったのが「神田らしさ」と「若者文化の発信」の2点でした。それら議論を通し、海外の事例を取り入れるだけではなく、神田の文化に合わせたオリジナルのまちづくりの手法やツールを取り入れていくことの必要性を感じました。

また東京で育った私自身も、神田のまちについて考えた時に、渋谷・新宿ほど神田の文化やまちの風景について語ることができないことに気づき、今後の神田の若者文化の発信の必要性を痛感しました。

今後ともこのように誰でも参加できるまちづくりの機会が増え、いずれそれが新たなスタンダードになって行くと嬉しいです。

【イベント概要】

日 時: 2017年3月13日(月)15:00-17:00
会 場: 共立女子大学 本館地下B101講義室(東京都千代田区一ツ橋2-2-1)
主 催: 神田警察通り賑わい社会実験実行委員会(神田警察通り沿道整備推進協議会・UR都市機構)
後 援: 千代田区
協 力: 共立女子大学
運営支援: 株式会社石塚計画デザイン事務所