パブリックスペースをつくって、パブリックライフをつづける。 初の大阪開催!「パブリックライフ学入門」刊行記念トーク!【ソトノバTABLE#8公式レポート】

ついに日本語に翻訳されました、「パブリックライフ学入門」。みなさんはもう読まれましたか?

私は大学院でパブリックスペースの研究を進めようと最近、人間の街(ヤン・ゲール著、2014年鹿島出版会発行)やシビックプライドの本を読み進めていた矢先、東京でやっていた、「パブリックライフ学入門」出版記念トークのソトノバTABLE大阪開催ということで、大阪の学生の私がレポートします。

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出版記念トークであるソトノバTABLE#8。会場は大阪市中央公会堂!

1918年に完成した大阪のミズベに映える名建築です。公会堂の前は風景画を描くたくさんの人、その見事な手さばきにみとれ立ちどまる人、段差に腰かけて音楽をきく人。ほんとにたくさんのアクティビティをみることができるステキ空間です。

パブリックライフって概念、おもろい!

それでは、ソトノバTABLE#8の模様をお知らせしましょう。

シビックプライドのなかで、今回のプレゼンターのひとりである武田先生は、パブリックライフについて、「誰もが気軽に他者と触れ合い、刺激を受け、都市のムードを共感する経験」といいます。

「なんか、イメージできそうででけへんけど、それってほんまにできたらすっごい素敵やん。」そんな気がしませんか?この一節、すごいワクワクしませんか?
「パブリックライフって何か知りたい!」

今回はそんな概念に魅了された建築・都市を考えるいち学生の目線からのレポートをおとどけします!

都市の究極How to本?いままでのヤン・ゲールと何がちがうん?

前半は翻訳者である武田重昭先生(大阪府立大学助教)、高松誠治氏(スペースシンタックス・ジャパン代表)のお二人に、それぞれの視点で「パブリックライフ学入門」の紹介をしていただきました!

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まずは、大阪府立大学武田先生からのプレゼンテーション。

なんと7月20日の初版の発行を待たずして重版が決定したという今回の本。ヤン・ゲール氏の著書で日本語に翻訳されたものとしては、「建物のあいだのアクティビティ」、「人間の街」につぐ、3冊目にあたります(すべて鹿島出版会)。

いままでの著書と大きく異なるのが、ビアギッテ・スヴァア氏が執筆に参加しているところだといいます。

第4章のなかで、ヤン・ゲールは、都市計画の歴史のなかで自分が取り組んできたことはどういうことなのか、見つめなおすという作業をしています。 本をお持ちの方は40ページからの見開きを見てみましょう。下段ではパブリックライフに関する研究分野の重要な実績としてヤン・ゲール自身、ウィリアム・H・ホワイトやクリストファー・アレグザンダーなど著書が示され、上段ではカミロ・ジッテに始まり、さんざん否定してきた近代都市計画のコルビュジェ、パブリックライフ分野においても多大すぎる功績を残したジェイン・ジェイコブスなど都市計画という分野を形成してきた著書がしめされ、その関係性が語られています。

ビアギッテ氏が入ったことで、いままでのヤン・ゲール氏の実績を俯瞰的にとらえているのです!

初学者にこそ勧めたい!鹿島出版会初(?)ですます調の本・パブリックライフ「学」入門

第5章では、なんと、パブリックライフの学び方を具体的に示されていて、 理論だけじゃなく、実際どんなふうにまちにでて、何をみて、何を調べればいいのか、わたしたちは知ることができます。

今回の「パブリックライフ学入門」、実は翻訳の際に、さまざまな「らしからぬ」タイトル案があったそうです。武田先生は、「ヤン・ゲール氏がまるで教室で話しているように感じることができれば」、と思ったそう。

そんな先生がお気に入りなのは、 タイトルの「学」というところ。いろんなことがおこるパブリックスペース、いろんなかたちがあるパブリックライフ。でも、パブリックライフを学べる体系というのは必ずあって、それをわかりやすく伝える教科書のような存在です。

また、今回の本、親しみやすいようにと「です、ます調」で書くことを高松さんが提案したそう。

分野に関わらず、すべての人がアクセスできるパブリックライフ、みんなにわかるパブリックライフの教科書、それが「パブリックライフ」入門なのです。

パブリックスペースって素敵。いろんなアクティビティがあっておもしろい!でも、それってどう説明すればいいの?そんな悩める初学者たちに読んでほしい!

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どうみる?どうしらべる?パブリックライフ

つづいては、スペースシンタックス・ジャパンの高松誠治さんからのレクチャー。しっかりと本について紹介してくださった武田先生とはうってかわって、ご自身が実務をこなしていくなかで分析的視点からパブリックライフを捉えるお話をしていただきました。高松さんの担当された1-3章では、具体的に「どういう調査をすれば、何がわかるか」が語られているそう。

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ヤン・ゲールは少し誤解している?!訳者解題:パブリックライフ5つの「&」(アンド)

レクチャーの前に、高松さんは「パブリックライフ入門」のなかで「スペースシンタックス」という分析手法がヤン・ゲール氏に「私たちが取り組んでいるものとは少しちがうもの」として紹介されていることを教えてくれました。

そこで、高松さんはまさにヤン・ゲール氏の誤解をとくべく、分析的立場のご自身が意識されている5つのバランスをレクチャーいただきました!

1. 空間「&」人

いくつかの写真をだして、ひとがどういう脈絡でやってきて、そこにどう過ごしたいのかを読みきって空間をつくらないと、その空間はつかわれなくなったり、うまく機能しなくなります。

2. 分析「&」感性

分析によるデザインと 「センスがないとデザインなんてわからない」という感性重視のデザイン。どちらかに偏った議論がよくみられます。

3. アイレベル「&」俯瞰

ヤン・ゲール氏はこれまでと同様、「アイレベル」での観察の重要性を語っていて、スペースシンタックスは「俯瞰」であると指摘しているといいます。しかし、高松さんは自らの実務経験から、アイレベルでの観察はもちろん大切ですが、少し俯瞰でいろんな場所の関係をみることで、ひとがどんな行動をとるかに関わる課題が見つかることがあるといいます。

4. 人力「&」ICT(情報通信技術)

今回の本の特徴が「調査の手法」がていねいに書かれていること。そして、「ひとの観察」によってしか得られない情報があります。そして、分析からデザインにつなげていくために、「得たい情報」を得るために「調査の条件」を考えるには専門的なテクニックが必要だといいます。

5. 組織「&」協働

大きな会社が全部やる手法、いろんな「つくる」、「つかう」、「はかる」などの違う特技をもったひとたちが力を結集してやる手法、いろんな取りくみ方があるといいます。

一見、反対に見える、これら5つの要素が「対」になった視点。でも、実際のところはそれぞれの要素同士、両方必要だったり、関係をよくする「&」の発想が必要だというお話でした。

「分析」視点からのお話でしたが、いろんなスケールでの観察・分析を意識が必要だということをあらためて教えてくださった説得力のあるレクチャーでした!

パブリックスペースをつくるデザイナーのパブリックライフ・プレゼン!

続きまして、「パブリックライフ」のプレゼンターは、「設計者・デザイナー」である福岡孝則先生(神戸大学特命准教授)と八木弘毅さん(日建設計シビル)。お2人は実際にパブリックライフに不可欠なパブリックスペースを「つくる」立場としてのお話が聞けました!

パブリックライフがつくるリバブルシティ

福岡先生は海外でさまざまな実務経験をお持ちのランドスケープアーキテクト。現在は「リバブルシティ(=住みやすい都市)」に関心があるといいます。

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縮小社会の日本では、住むまちを人が選択する時代がやってきます。よりリバブルなまちにすることで、住む場所として選ばれることが都市にとって大切になってきます。

人が集まって住む都市のなかで、住みやすく生きていくためには「余白」や都市にない自然が必要で、こういった空間の機能や質を高めることが、リバブルシティにとって大切な要素であると福岡先生はいいます。

パブリックライフをどう持続させるかが課題

現在、海外では暫定的なパブリックスペース利用のムーブメント、タクティカルアーバニズムがおきています。日本でも銀座のソニービルや港湾跡地など、この流れがおきつつあります。

また、福岡先生は設計者として関わられたところに自ら事務所をかまえ、季節によるプログラムを変化させながらパブリックスペースを運営に取りくんだり、神戸の東遊園地公園での社会実験を継続してきました。

そのなかで、「パブリックスペースがひとをつくり、ひとがパブリックスペースをつくる」相互関係を実感するとともに、そこで生まれるアクティビティやムードを持続させていくことの難しさを体感しているといいます。社会実験というツールを通しても、それをどうやってリサーチの成果として捉え、都市スケールや今後に生かしていくのか。あらゆる意味での「持続」というキーワードが今後の課題になるのかもしれません。

いま、「つくりたい」パブリックスペース

プレゼンターとして最後に登壇したのは日建設計シビルの八木弘毅さん。駅前広場や街路などの公共空間のデザインの仕事をされています。

日本の”建築”の評価は海外でもとても高い一方、道や川辺を歩くと海外との差が歴然としていることに問題意識をもって現在の事務所に入ったそう。

街路でコンサートがひらかれて、そこに子どもたちがねころんだり。パブリックライフ先進国であるヨーロッパに滞在中に出会った、「みんなでつかう」、「自分たちでつかう」風景。八木さんは特に、ひとりでも「居心地のいい場所をみつける」ことができるパブリックスペースに魅力的に感じたそう。

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どうやって、「つくる」?パブリックスペース

形を決めるのにはたくさんのアプローチがあります。ヤン・ゲール氏も今回の著書で「パブリックスペース・パブリックライフスタディの実施プロセス」として、その解のひとつを示しています。八木さんは、この「翻訳→プロセス→実施」のところに強く興味があるといいます。

八木さんは、今回の本は、「形がアクティビティや調査、ひとのふるまいに従っていくのでは?」というところに踏みこんだものだと考えているそう。

姫路の駅前広場の設計に携わった八木さん。この広場が予想どおりに、また、予想に反してつかわれるところを実際に見て、「アクティビティをどれほど狙ってつくるべきなのか」ということが気になっているといいます。

さらに、生まれて初めて広場で水遊びをした子どもと接してみて、いい個々のストーリーが経験できる場所をつくるために、説明できるような公共空間を設計したいと思ったそう。

どんな空間であるかを調べ、それを実装していく方法を深く考えることができれば、この本は「つくる」立場のひとにとっても頼りになる1冊なのかもしれません。

ディスカッション:「つくる」編

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後半はドリンクを片手にディスカッション!

パブリックライフに必要不可欠なパブリックスペースを「分析する(観察する)」、「設計する」をそれぞれのバランスでシゴトにするパネリストたち。

みな、「どう読み取って場所をつくって、それがまたどうパブリックライフを生んでいくか」という共通の関心を持っています。

武田先生(以下、敬称略):今回、高松さんのようなどちらかというと「分析的」立場と、どちらかというと設計者という立場からのお話があると思います。分析と感性の話がありましたが、高松さん的にはこれをどう両立させようとしていますか?

高松さん(以下、敬称略):分析的立場といっても、わりと、人をみることを考えています。また、壁や床なんかの要素を見るのではなく、”空間”をみて、捉えること。

武田:空間とマネジメントをつなげるという立場に1番近いのが福岡さんだと思います。予測不可能性はどうプランニングにいれていけばということについて意見はありますか?

福岡先生(以下、敬称略):空間をつかい手にある程度任せるみたいな(生態学的な)考え方が日本は苦手で、証明できないと次に進めないみたいなところがあってそれがパブリックスペースの議論にもすごくあるのじゃないかと思っていて。

武田:パブリックライフに立ち戻って、つぶさに計画していくのは、ひとついまの社会的背景とマッチしていくものがあると思っていて、そうなると福岡先生のおっしゃる時間の概念もすごくおもしろいですね。

形態は機能に従うか何に従うか。アクティビティに形態が従うことは実は機能に従うこと?とも思えます。パブリックライフからなにをエッセンスとしてとって形態にデザイン派生するかということですが、設計するときに何がとれれば設計しやすいと八木さんはお考えですか?

八木さん(以下、敬称略):実際に実務をこなしてきて、つかい手の個々のストーリーが本質のように感じています。それをうまく設計にむすびつけるには、「大きな計画論」が1番大事だと思います。大きな計画論というのは、そこに水が流れていて触れられるとか、芝生があって緑にふれられる、走れるとか。
建築はディテールが命だけど、パブリックスペースはそういうおおらかな価値があっていいのではと思います。

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ディスカッション:「つづける」編

武田:どう持続可能なものにするかという議論がありましたがどう空間を維持し、稼ぐか、人材を確保するかという。それについて、泉山さんは意見がありますか?

泉山さん(以下、敬称略):パブリックライフがアクティビティに関わるっていうのは2つあって、イベント的なものと、日常的な運営によって生まれるものがあります。日本では、圧倒的に前者が多く、もっと日常的な運営のなかでパブリックライフを生んでいくのが今後の課題です。また、運営のスパンを長く設定して考えることも、投資ができるという点で大切だと思います。

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武田:今日は本に書いていないことを議論できてよかったと思います。これを日本で活かしていける、ここからみえてくる今後の都市像をひとりずつお願いします。

八木:賑わいから人を集めるのはいろんな人が取り組んでいるので、ごく私的な誰かに愛されるパブリックスペースをつくりたい。囲われてないということはパブリックスペースにおいては結構大事だと考えている。

福岡:自分自身がパブリックスペースになりたい。大学にいるといろんな人にアクセスしてもらって接することができる。人間が一番難しい。声を反映していくのが難しい。

パブリックスペースは何かを動かしていくためのツール。公園のなかを活性化していくことでそれをどう都市へ還元していくか、理論的にはわかるが、実際にというところをやりたいです。

高松:わたしはこどもの頃からまち好き。まちはいい偶然がおきるからいい。スペースシンタックスをやっていてよく言われるのが(図が)赤くなればいいのかということですが、そうじゃなく、少し変えることでいい偶然を生むことをやっていきたいです。

泉山:パブリックスペースは色んな分野のひとが交われる。パブリックスペース全体としてのムーブメントを盛んにしていきたい。オープンカフェをつくっても座らないとか、海外に比べ「慣れ」がないので、その部分の世論をつくっていくべく活動したいです。

今回参加していただいたパネリストならではのテーマをディスカッションできましたし、みなさんのめざす都市像や自分像はとても大阪らしい、アツいものになったのではないでしょうか!

最後はみなさんで交流会。大阪も、東京も、全国つながって、ムーブメントをおこしていきましょう!

【ソトノバTable#8概要】

日時:2016年8月3日(金)19:00-21:00
会場:大阪市中央公会堂
主催:ソトノバ|sotonoba.place、
<前半>
「パブリックライフ学入門」の紹介
テーマ1:「大阪で考える、パブリックライフ学入門」
武田重昭先生(大阪府立大学助教)
テーマ2:「パブリックライフへの分析的アプローチ」
高松誠治氏(スペースシンタックス・ジャパン代表)
<後半>
ディスカッション「パブリックライフとそのはかり方」
高松誠治氏(スペースシンタックス・ジャパン)、福岡孝則先生(神戸大学特命准教授)、八木弘毅氏(日建設計シビル)、泉山塁威(明治大学理工学部助教/ソトノバ編集長/(一社)パブリック・プレイス・パートナーズ共同代表理事)
コーディネーター:武田重昭先生(大阪府立大学助教)
Photo by Chiyuri Monden

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門田 知優里

門田 知優里

大阪大学大学院工学研究科/修士2年/その場所でしかできない建築を考えることに興味をもち、都市・地域計画を専門とする先生の研究室に入る。まちなかを歩くのが好き。修士論文では、昨年オープンしたとある公園でのアクティビティの多様さに惹かれ、その公共性の変遷について調べたいと考えている。