「都市の健康診断をするのが私の仕事だ」ゲール・アーキテクツプレゼン@新虎通りレポート

最近、ゲール・アーキテクツ(Gehl Architects)のDavid Sim(ディビッド・シム氏)が東京で集中的にイベントやプロジェクトを行っています。
先日行われ、ソトノバでもレポートしました、大手町川端緑道プレイスメイキング社会実験報告会でもお話しいただきました。

>>ゲール・アーキテクツのリサーチプレゼン!【レポート:大手町川端緑道プレイスメイキング社会実験調査報告会】

今回は、12月9日に虎ノ門・新虎通りフューチャーセッションでのディビッドのプレゼンがありましたので、レポートしますね。
連日のプレゼンですが、「human scale」という別タイトルでお話しいただきました。
なお、大手町川端緑道でのプレゼンと同内容は省略しています。

photo by yasuyuki kabata

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国によって気候や文化は違うかもしれないが、人間の行動は共通している

「パブリックライフ(Public Life/都市生活)とは何か。それは人を理解しないとわからない。」と語り、
「人は二足歩行で両手を使うことができ、嗅覚、聴覚などの5感をフルに使っている。国によって気候や文化は違うかもしれないが、人間の行動は共通している」と話します。
「散歩が楽しいストリートは、触れる高さに商品があり、食事の匂いがあり、アイレベルに知覚に訴えかける。3,4or5km/hのスピードで人は歩く。」と話します。
人は経験がないとできるのか不安になりますが、人の共通の行動がデータとして示されてくると説得力がありますよね。

次に自転車都市として有名なコペンハーゲンのプロセスについて語ります。
「コペンハーゲンも最初は車社会だった、しかし北欧の気候もあり、すぐに車が馴染まないことがわかった。しかし、自転車都市にするにはいろいろ仕掛けが必要であり、自転車のサインや自転車講習(移民の人向けも実施)、自転車道の整備だ。自転車は車よりも場所をとらないし、70%の人が雪でも自転車を利用する。と語ります。雪でも利用するのは驚きですね。

デンマークの経験を最初に輸出したのはオーストラリアのメルボルン。
「まずはベンチや花壇をおくことから始めた。自転車道整備には縁石を設けて車と自転車の距離を保つ必要があるが、オーストラリアの車の運転は荒いので、縁石を高め(15cm)に設定している。」と話し、
「警察の代わりに花屋さんを設置した。安い賃料の代わりに深夜営業までしてもらうことにした。これによって柔らかい形でまちを見守ることができる。今では、生活しやすい都市ランキングにラインアップしているが、こうゆう指標は世界会議誘致などに有効だ」と話します。

ニューヨーク市は車の交通量を計測していたが、歩行者交通量の計測はしていなかった

ニューヨークのタイムズスクエアの話では、
「90%自動車道だったが、90%は歩行者だった。ニューヨーク市は車の交通量を計測していたが、歩行者交通量の計測はしていなかった。計測したところ、車が50000台に対して、歩行者は97000人いたことがわかり、ブルームバーグ市長(当時)は民意を得るためにも任期中(4年)でできるようにタイムズスクエアの広場化を政策に位置付けた。」と話します。

photo by gehl architects WEBSITE

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道路をペイントするだけで人は騙される。それを利用し、経験することで、いいね!と受け入れられる

どのようにこれができたのか、気になりますよね。
「道路をペイントするだけで人は騙される。それを利用し、経験することで、いいね!と受け入れられる。最初はヨーロッパ文化はアメリカには通用しないよとみんな言っていたが、今やアメリカの文化となっている。これこそが自由だとみんな言っている」と話すように、道路をペイントすることで、車と歩行者空間の分配を再編し、真ん中に歩行者広場をとることで、車も人も道路が変わったかのように勘違いをして使うというのが人の心を動かすのには重要そうですね。

photo by gehl architects WEBSITE

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市民の意見でまちをつくるプロセスに共感

話は変わって、「ニュージーランドのクライストチャーチでは、2011年に起こった大震災の後に、今後どのような街にしていくかというイシューに対して、WEBSITEやリアルな場でポストイットで意見を募りました。市民の意見でまちをつくるプロセスに共感し、多くの意見が集まりました。そこで出た意見では、怪我をした人の中で、高層ビルで住んでいた人が多く、市民は高層ビルが嫌いだと言い、匿名性も高く誰が住んでいるかもわからないとして、一番高い木よりも高い建物はつくらないと決めて、街並みのルールをつくりました。」と、クライストチャーチのシェアアイデアのプロジェクトを紹介しました。

photo by share an idea WEBSITE

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公共空間や都市の分析の調査をして、ツボとなるところに社会実験を行う

ゲールアーキテクツは、ヤン・ゲールの大学の研究室から派生してできた事務所のようですが、
「アプローチとして、measure(計測)、test(実験)、refine(改善)という3ステップを実践していて、計測では、公共空間や都市の分析の調査をして、ツボとなるところに社会実験を行って、パブリックスペースを利用し経験してもらうことでフィードバックし、実際に改善提案をしていく」というアプローチを取るようで、日本では、調査は調査、社会実験は場所が決まっていてそれだけで調査、設計・工事はまた別と縦割りに業務や目的・手段が区分けされていますが、一連の流れでアプローチされているのが素晴らしいですね。

低層階で物事が起こっている

最後に、虎ノ門ということで、企業価値企業価値をどう上げるかという話では、「企業と市民の距離が遠い、その間として期待されるのがパブリックスペース。高層ビルで仕事はするが、低層階のオフィスロビーやスタバで物事は起こっている。」と話します。企業価値についてはレポートがまとまっているそうです。

オフィスの低層部で人が出会える仕組み

現在東京で開催されている「フランク・ゲーリー展」にいってきたそうで、「FACEBOOKの新しいオフィスの模型が展示されていた。模型を見ると、高層棟は一つもなく、クリエイティブに働く上で、ランドスケープや緑、運動するスペースなど全てが低層に関係している。他にもgoogleやnikeの本社も同じようになっていて、低層部で人が出会える仕組みになっている。」と話します。

photo by OPENERS

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高層ビルよりも10-15家族くらいの中層がコミュニティの密度感がよい

最後に、ヒューマンスケールとアーバンスケールの話から、高層ビルの多い東京を危惧するディビッドは、「高層ビルは安いがメンテナンス費が高い、10-15家族くらいの中層がコミュニティの密度感もよく、誰が住んでいるかがわかるスケール感だという。高層ビルは誰が住んでいるのかがわからないので、火災の際に困る。また、エレベーターも停止すると、非常時には20-30階から階段で降りなければいけない。」と話し、低層部のコミュニケーションやビジネスのチャンスにパブリックスペースの可能性がもっとよくなると私たちに期待を寄せました。

photo by yasuyuki kabata

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泉山 塁威
ソトノバ編集長/明治大学理工学部建築学科助教/一般社団法人パブリック・プレイス・パートナーズ/博士(工学) パブリックスペースとエリアマネジメントを専門とするタクティカル・アーバニスト。リサーチャー・プロジェクトデザイナー。 公開空地や道路占用許可の特例、エリアマネジメントのビジネスモデルの視覚化などの研究や実践プロジェクトを手がける。