ストリートウィーク特別企画! これからの日本のストリートの未来をつくろう! 【ソトノバTABLE#20 レポート前編】

ウェブメディアであるソトノバが企画するリアルイベント「ソトノバTABLE」。毎回、ソトに関するテーマを掲げ、その道の研究者や実践者をゲストに招いてお話を伺います。記念すべき20回目の今回はストリートウィーク特別企画として開催しました。

ソトノバTABLE史上最多である6人のスピーカーを迎え、大いに記念回を盛り上げていただきました!

道路の利活用を考える1週間

ストリートウィークとは、今回初めて実施する道路利活用キャンペーンです。日本国内において、より積極的なストリートの活用を促すことを目的としています。ソトノバ・ラボの部会であるパークレットラボが中心となって企画しました。

河川や公園の利活用に関しては、近年国内で様々な活動が見られるようになり、活動内容をシェアするプラットフォームなども充実してきました。しかし、ストリート上で行われるソトの活動に関しては、まだまだ大きなポテンシャルを活かしきれていません。

そこで、ストリートウィークというキャンペーンを通して、ストリート利活用に関する活動のシェアやネットワーク化する場を構築。このプラットフォームができることで、人々が気軽に情報を手に入れられるようになり、より多くの事例を生むためのきっかけづくりになると同時に、道路管理者に対する新たなビジョンの提示を目指します。

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ストリートウィークでの取り組みを紹介する

今回のストリートウィークでは、目玉イベントを2つ設けました。ひとつは、期間中にUDCO(アーバンデザインセンター大宮)が開催した社会実験「おおみやストリートテラス」内で、9月15日に実施した「大宮パーキングデー」です。

おおみやストリートテラスでは、氷川緑道西通線の道路拡幅予定地を活用し様々なプレイヤーが飲食を提供したり休憩スペースを設置しました。ソトノバでは、このスペースを利用しパーキングデーを実施し、道路上に誰もがくつろげる小さな公園を作りました。

そして2つ目の目玉イベントが、今回のソトノバTABLE#20です。ストリートウィーク2017の総括として、日本のストリート利活用のこれまでとこれからを考える場としました。

日本のストリートを振り返る

最初のスピーカーは、横浜国立大学・助教、ソトノバライターの三浦詩乃さん。冒頭に、ニューヨークの交通局長が出版した「Street Fight」という本を紹介し、ニューヨークのストリート空間に大きな影響を与えたこの本が過去からの学びを基に作成されていることを説明。

「日本のストリートの未来を考えるために、これまでを振り返ることが大切」とトークテーマを位置づけ、日本のストリートを振り返るプレゼンが始まりました。

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横浜国立大学助教、ソトノバライターの三浦詩乃さん

日本の道路空間は戦後、自動車保有台数が急速に伸びるとともに発展しました。車のための道路が整備され、祭りなどのイベントも実施されないような空間になったことを見直すために60年代後半から歩車分離の思想が取り入れられ始め、80年代以降、積極的に歩行者のための街路空間、景観整備が進められてきました。

その結果として、近年では国内に様々なメインストリートが生まれ、その数は合計で310に上ります。現在の取り組みでは、ストリートを歩行者にとって安全で開いた空間にするだけでなく、日常的に豊かな活動を生み出せる場所に作り変えていこうという動きになっています。

ストリートの使い方の部分に着目して戦後を俯瞰してみると、復興期には闇市に代表されるような、使いたい人がゲリラ的にストリートを使っていたのに対し、近年は組織にオーソライズされた、地域のためのストリート活用が多く見られます。ストリート上に現れる空間の形は似ていても、目的や背景は異ることが分かります。

これまで日本のストリートを振り返ったところで、三浦さんからひとつ問題提起がありました。それはメインストリートの在り方についてです。

メインストリートは街にとって最も大事な空間なのに、これからの使い方が議論されていません。地方都市などでメインストリートの空洞化が進んでいるなか、新たな取り組みが求められています。しかし、再開発により箱そのものや組織規模が大きくなっている、固定資産税の負担が大きいといった理由により、新しいアイデアを持った人材、アイデアが入りにくい状況にあります。

また、民間が動くことにより新たなアクターが入れるような状況になったとしても、街全体に影響を与えるメインストリートの将来像を民間主導で考えるには限界があります。道路を利活用するだけでも専門知識を一から学ばなければいけないし、一般市民が街を俯瞰して自分たちの取り組みを位置付けることも難しいのが現状です。

リノベーション事業などが全国的に流行ってきていますが、それらもメインストリートの動線が活かされているはず。街路を利活用することの公共性を判断する指針も、整っていないことも大きな問題です。

三浦さんは、「旭川にある平和通りのように、国道を歩行者天国に変えたような事例はある。街から常識は変わっていくし、法律も書き換えられます」という前向きな一言で、プレゼンテーションを締めくくりました。

まちづくりと街路の新たな展開

2人目のスピーカーは、国土交通省都市局街路交通施設課長の渡邉浩司さん。渡邉さんがこれまでまちづくりの現場で経験したことや、これから日本のストリートが向かうべき方向性をお話いただきました。

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国土交通省都市局街路交通施設課長の渡邉浩司さん

まずは自己紹介とともに、現在勤めている街路交通施設課の社会的役割を紹介。街路交通施設課は各都道府県に補助金、交付金を出し、自治体が道路をつくるのを応援する課です。

もともと日本の都市計画道路は、街路構造令と道路構造令という2つの政令によって計画されていました。いずれも旧都市計画法が制定された1919年に同時につくられ、東京大震災や戦後の復興もこれらに基づいて進められました。特に街路構造令は、路面電車を入れて、道幅の6分の1を歩道として確保しそこに街路樹も入れるというようなガイドラインを敷くことで、良好な市街地環境の水準を確保しようとしました。

ところが1950年以降、急速に人口が増え成長の時代を迎えると、都市の拡大に対応するために車中心の都市環境を迅速に整備することの重要性が高まりました。結果として、1958年に道路構造令が改正され、街路構造令は道路構造令の中に含まれる形となり、街路らしい空間整備の優先順位は低くなってしまいました。

人口減少時代に入り、道の役割や優先順位は大きく変わろうとしています。街路交通施設課では現在、串とお団子に例えられるようなコンパクト+ネットワーク型の都市形成を目指し、ネットワークづくりをしています。

ここで豊島区での取り組みに話題が切り替わります。

豊島区では、国際アート・カルチャー都市というコンセプトを打ち出しています。2015年の庁舎移転をひとつのきっかけとして、グリーン大通りの社会実験や南池袋公園の整備など、歩行者空間を豊かにするための実践を進めてきました。

今後2020年に向けた大きな取り組みとして、池袋駅東口駅前の明治通りを歩行者空間に変換する計画があります。環状5の1号線というバイパスの整備をすることで、駅前の明治通りは通過交通から開放され、自動車の量は著しく低下することが予想されます。これにより、明治通りを含んだ駅前空間をグリーン大通りにつながる歩行者専用道路とすることが可能です。

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池袋駅前の交通を円滑にする環状5の1号線工事(資料:東京都建設局)

西口の街路空間の整備も平行して進めます。そして東西をつなぐペデストリアンデッキを配置することで、池袋駅を中心とした東西一体の環境整備が完成するのです。

こうしたハード整備が進む一方で、ソフト整備も実施されてきました。区内で様々な人たちが取り組んでいるまちづくりがまったく連携がとれていなかったのですが、「としま会議」と呼ばれるまちづくりミーティングを開くようになり、地域のプレイヤーどうしがお互いのことを把握するようになりました。

小さな取り組みと大きな計画の狭間に

具体的な事例の後は、これからのまちづくりを考える話題です。現在、まちづくりにパラダイムシフトが起こりつつあります。縮小社会に合わせて、都市交通インフラ自体がリノベーションをしていかなければなりません。これまでの拡大社会を前提としたマスタープランは役に立たず、縮小する都市に臨機応変に対応できるガイドラインが求められています。

「その時必須になるのが、官民連携、そしてハードとソフトのバランスです」と渡邉さんは強調します。都市をどうつくるかというハードと一緒に、都市がどう使われるべきかというソフトを同時に考える必要があります。

こういった背景を基に注目が集まるのが、タクティカル・アーバニズムのような、小さな取り組みを繰り返し、成功したものを大きく広げていくようなアプローチです。課題は、タクティカル・アーバニズムに代表されるボトムアップのアプローチと、行政が設計するマスタープランの整合性をいかに高めていくかという点にあります。

現在、人が主役の公共空間の実現に向けて、あらゆる制度が整ってきています。問題は制度以上に人々の心の壁であり、新しい挑戦に対する抵抗感を取り除くために、小さなことから成功事例を増やすことが大切です。「その積み重ねにより、安全性や円滑性に配慮しつつも、人々の交流や活動を促進するような都市空間の整備は可能である」と渡邉さんはプレゼンをまとめました。

行政と民間をつなぐ役割が必要

クロストークでは、ソトノバTABLEの司会進行を務める石田祐也さんがモデレータとして加わり、三浦さん、渡邉さんを交えて議論を深めました。

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クロストークでは、制度を中心にこれから求められる人材などが議論された

議論の中心となったのは、制度のあり方についてです。「やみくもにハードルを下げれば良いかというと、やはりそういう訳にはいきません。道路管理者が管理しやすい状況を担保した上で、少しずつ提案が実現されていくことが重要です」と渡邉さんは説明します。

道路管理者の役目はあくまでも道路の安全を守ることであり、活用することとは別の問題であるというところがとても難しいところです。ですが、民間側からたくさんのアプローチがあり、少しずつ事例が増えていくことで考え方なども変わっていきます。諦めずに絶えず必要性や有効性を訴えていくことが重要です。

また、「制度が変わっていってもそれに気付かない市民が多い。共有可能性を高めていくことも必要とされているのではないか」と三浦さんが指摘します。これに対し、行政と民間の間に入って橋渡しできるような能力がこれから求められるのではないか、と渡邉さんが未来に向けた課題を提議します。

ここで、「ニュージーランドには、行政の中にファシリテーターという役割の職員がいる」と石田さんからの情報提供が。ファシリテーターは課に属することなく、民間からの要望を適切な窓口につないだり必要な手続きをまとめたりといったコーディネートが仕事であり、まさに民間と行政をつなぐ役割を果たしている存在です。日本の行政の中にも同様の役職が生まれるとスムーズに話が進むかもしれません。

ソトの活用に向けての新たな課題とそれに対する解決策が垣間見えたところで時間切れです。

以上、前半のレポートでは、セッション1で繰り広げられたやや俯瞰的なお話をまとめました。後半のレポートでは、セッション2の実践者からの事例紹介と、セッション3のワークショップの様子をお伝えします!

All photos by Nozomu ISHIKAWA

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矢野 拓洋

矢野 拓洋

建築家/研究者/renu+設立者/IFAS設立者/修士(建築工学) デンマークで建築を中心に活動中。立ち上がった建築単体のみでなくそのデザインプロセスやデザイン教育のあり方、建築周辺の環境について研究しています。