都心ストリートで五感を刺激! 東京・丸の内仲通り「利活用アイデア実験祭」レポート

人工芝の上で寝っ転がったり、ハンモックでくつろいだり、タライに張った水に足を浸したり──。7月23日の日曜日、東京・丸の内仲通りは、いつもとは違うアクティビティを体験する人で満たされました。ストリートの居場所づくりのアイデアを、実寸の仮設アイテムで実現、その効果を検証する試みです。

この「実験祭」を仕掛けたのは、ソトノバと日本都市計画家協会(JSURP)が共催で企画した講座「タクティカル・アーバニズムの作法」の受講生。5月から2カ月にわたり、様々な分野・年代の実務者や学生など27人が4班に分かれて、検討してきた集大成でもあります。(参考記事:パブリックスペースをもっと豊かに! 2カ月にわたる講座「タクティカル・アーバニズムの作法」が開講実践企画も本格始動! 岡崎「おとがワ!ンダーランド」から学ぶ「タクティカル・アーバニズムの作法」第2回レポート)。大丸有エリアマネジメント協会(リガーレ)の協力で実現しました。

それぞれの班が、どんなアイデアで道路上のアクティビティを引き出したのか、レポートしていきます。

現場での観察から生まれるアイデア

実験の舞台となった丸の内仲通りは、南北1.2kmの目抜き通り。リガーレが中心となって、2015年に東京圏で初となる国家戦略道路占用事業の認定を取得し、オープンカフェや歩行者天国など、人を中心とした空間に向けた取り組みを進めています。

丸の内というとビジネスパーソンが中心のイメージがありますが、受講生が改めて来街者を観察してみると、「ベビーカーが多い」、「多国籍なグループの利用が多い」など、普段は見落としがちな発見がありました。

「こんな人たちがもっと楽しんで過ごせる空間にならないだろうか?」という思いから、アイデアを生み出し、形にしていきます。

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Figure by Shihona ARAI

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当日のマップ。様々な仮設ツールでアクティビティを提供します Figure by Shihona ARAI

今回の実験祭は、2015年に米国サンフランシスコ市のメインストリート・マーケット通りで始まった「Prototyping Festival」を参考にしています。街に活力をもたらすアイデアを、アートやテクノロジーの要素を盛り込んだ仮設のファニチャーで実験するプロジェクトです。

ただ目新しいものをつくるのではなく、「公共空間こそが、街の大きな課題を解決する舞台だ」と信じ、多様な人々とコミュニティ、地区とをつなぐ実験を展開する。この理念に共感しつつ、日本・丸の内ならではの空間づくりを進めました。

半日限りの仕掛けが街に出現!

受講メンバーたちは、予算と時間に制約のある中、既製品に手を加える、あるいは、企業に提供協力を求めるなどして、丸の内仲通りの空間の質に配慮しながら各種のツールをデザインしていきました。

「多様な主体(利用者)」を対象に、「あらゆるくつろぎ方」を引き出す。そして仲通りを「体感しながら楽しむ」ことや、歩行者のために「新たな機能を挿入する」ことをポイントとして、それぞれの提案に反映しています。

はじめに紹介するのは、裸足の感触を楽しめるゴザ、涼しげな風鈴など、日本らしい「和」の要素をアップデートした場づくりを目指したものです。

都会の忙しい生活の中、空とビルの谷間を眺めて寝っころがる贅沢を、道行く人に提供します。レーザー加工した看板で、その思いをメッセージにして伝えます。

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お店の前でも寝そべってリラックス Photo by Nozomu ISHIKAWA

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木ボードにレーザー加工した看板で、オシャレに趣旨を伝えます Photo by Nozomu ISHIKAWA

「ソトの場の一番安らげる家」をテーマにした提案は、水を使うための様々なハードルを乗り越えて、「足休め空間」を実現しました。ハンモックやチェアを配し、ほっと一息つける人工芝の一角に、「足水」スペースが出現! 向き合って座ることで会話も生まれます。

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足先を水に浸しながら、会話も弾みます Photo by Nozomu ISHIKAWA

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ハンモックに寝っ転がって、スマートフォンを見たり、本を読んだり Photo by Nozomu ISHIKAWA

「動物の身体感覚を取りもどす」をテーマにしたものは、ハーブを並べたテーブルとカーブした長イスを用意しました。触ったり、香りを楽しんだりと、ハーブを五感で楽しんだあとは、トリックアートでポージング! 丸の内で過ごしたひとときが、写真としても残ります。

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ハーブに興味津々の来街者 Photo by Nozomu ISHIKAWA

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トリック写真用で、今日という日の思い出に Photo by Nozomu ISHIKAWA

子どもも大人も楽しめる居場所づくりを狙った提案では、ポップな色彩の編み物やテキスタイルを使って、あっという間に車止めのボラードを座り場に変身させました。その他にも風船や、楽器、オセロといった、好奇心をくすぐるツールを散りばめることで、言葉の壁を超えるコミュニケーションを生み出しました。

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車止めを飾り付けて座るための装置にします Photo by Shino MIURA

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ストリートでオセロ対戦! Photo by Nozomu ISHIKAWA

アクティビティを記録して生かす

半日にわたる実験祭では、様々なアクティビティが観察されました。やりっぱなしではなく、記録して検証するサイクルが重要です。時間を追って見ていきましょう。

AM11:00- 設営開始

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ハーブテーブル準備中 Photo by Shino MIURA

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準備万端で利用者を迎えます Photo by Nozomu ISHIKAWA

受講生は、当日設営についても事前に綿密に打ち合わせ済み。それでも、いざ現場でセッティングしてみると思ったより時間がかかる様子です。「一体何がはじまるのか?」と興味津々で見守る来街者もいました。

12:00-
受講生は利用者の反応を見ながら、レイアウトを調整して、より快適な空間にしつらえ直していきます。

雨に見舞われる時間帯もありましたが、すぐに現状復帰し、雨上がりの来街者を迎えます。

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石畳に馴染む人工芝 Photo by Nozomu ISHIKAWA

PM2:00-

友達同士、家族連れ、1人でなどなど、次々と多様な利用者が訪れはじめました。

現場を見守る受講生と利用者の間にもコミュニケーションが生まれます。お気に入りの場所を見つけた人の滞在時間は長く、くつろいでいました。この実験祭の噂を聞きつけての、視察もちらほら。

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ベビーカーの人たちも利用 Photo by Nozomu ISHIKAWA

PM4:00-

それぞれの班が各場所での利用実態を、観察調査やアンケート調査で記録していきます。企画の終盤に差し掛かり、だいぶんサンプルが集まってきました。これらのデータは、受講生が描いた仮説通りに空間が使われていたかを検証し、丸の内での次のアクションに備えるために用います。

ソトノバ内の研究チームであるソトノバ・ラボとしても、ブロック全体を俯瞰する調査を実施しました。実験祭開催区画は仲通りの他の街区と比べて、圧倒的にアクティビティ量が多くなっていたのでした。

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人の属性や行動をメモ Photo by Nozomu ISHIKAWA

PM4:30-

名残惜しいけれど、そろそろ撤収の時間です。「また、やらないんですか?」という利用者の声もあり、受講生も笑顔!

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ハーブテーブルも、これから片付け Photo by Nozomu ISHIKAWA

大胆にストリートの新しい楽しみ方を提案した今回の実験祭。ありがちな公募型社会実験の形をとらず、「街の顔となる来街者のふるまいを読みとり、ミニマムの予算でアイデアを試し、検証する」という、タクティカル・アーバニズムが目指すサイクルをどれだけ実現できるか、にチャレンジしました。

果たして地元にどう受けとめられたのか? 利用者の本音は? そして、定期的にできるコンテンツとなり得るのか? 今後の展開につなげてこそ、本講座の意味があります。しっかりフォローしていきたいと思います。

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おつかれさまでした! Photo by Nozomu ISHIKAWA

丸の内仲通り利活用アイデア実験祭
Marunouchi Naka-dori PROTOTYPING FESTIVAL

日時 7月23日(日)11:30〜16:30
場所 丸の内仲通り 丸の内MY PLAZA前
主催 ソトノバ、JSURPまちづくりカレッジ
協力 NPO法人 大丸有エリアマネジメント協会(リガーレ)

Cover photo by Nozomu ISHIKAWA

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三浦 詩乃

三浦 詩乃

助教横浜国立大学都市イノベーション大学院 交通と都市研究室
横浜国立大学都市イノベーション大学院 交通と都市研究室助教、ソトノバライター/博士(環境学)。歩行者空間に着目し、旭川市、東京都、アメリカ・ニューヨーク市など国内外のストリートデザインと、そのマネジメントに関する研究を行う。