パブリックスペースをもっと豊かに! 2カ月にわたる講座「タクティカル・アーバニズムの作法」が開講

都市計画やまちづくり分野でホットな概念となっている「タクティカル・アーバニズム」。仮設的なアクションから始まる、ボトムアップ型の方法論への応用事例が相次ぎ、注目を集めています。

ソトノバでも早くから紹介してきましたが、今回、タクティカル・アーバニズムを学び、実践する講座をプロデュースしました。日本都市計画家協会(以下、JSURP)と共催で、タクティカル・アーバニズムの一連のサイクルを体感しながら身に付けることを目指す「タクティカル・アーバニズムの作法〜パブリックスペース活用における戦術とアプローチ〜」です。

2017年5月から7月までの2カ月にわたり、概念から実例、調査手法までを学び、現実の敷地でアクション。場所の改善まで提案し、その成果を発表するプログラムです。学生である筆者も、アシスタントとして手伝いながら受講しています。5月23日に開催された初回講座の様子をレポートします。

プロデュースを手掛けたのは、ソトノバ編集長にして東京大学先端科学技術研究センター助教を務める泉山塁威さんと、ソトノバ副編集長であり、都市計画コンサルタントの首都圏総合計画研究所研究員である荒井詩穂那さん。そしてソトノバのメンバーで、横浜国立大学大学院で助教を務める三浦詩乃さんの3人です。

初回となる今回は、泉山さんと荒井さんが登壇し、プログラムの概要や、タクティカル・アーバニズムの概念を説明しました。

「つくりながら考える」、これまでの都市計画との違い

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ひとりずつ、参加者同士で自己紹介をしました Photo by Yuria KANEDA

はじめに、講師、アシスタントと受講生全員の自己紹介。2カ月の間、一緒に勉強するメンバーです。お互いの名前や顔、所属や今回の講座への参加動機を話していきます。

受講生は27人。都市・環境系の学生から行政、都市計画コンサルタントのほか、まちづくりとは直接関係ない業種の方もいて、年代も20代から50代と多業種多世代。幅広い層が集まっていました。

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従来の都市計画と何が違うのかと説明する荒井さん Photo by Marin HARA

全員の自己紹介が終わったところで、荒井さんによる「タクティカル・アーバニズムとは何か」の講座が始まりました。

この講義では、タクティカル・アーバニズムの始まりについて、米国のStreet Plans Collaborativeが編集した5つのオープンソースと1冊の書籍をもとに解説。どのような背景で生まれてきたものなのか、タクティカル・アーバニズムの立ち位置を確認しつつ示しました。

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これまでの都市計画とタクティカル・アーバニズムのデザインプロセスの違い Figure by Rui IZUMIYAMA

この図にあるように、これまでの都市デザイン・プロセスはハード指向であり、トップダウン的に計画を立ててからデザインという戦略的プロセスにありました。これに対し、タクティカル・アーバニズムのプロセスはつくりながら考えるという手法。つまり、戦術的プロセスでデザインを生み出しています。

「ハード指向」に対する「仮設空間指向」と言い換えることもできるでしょう。まずアクションすることで、そのまちとの相性を検証する。そしてその反応を踏まえ、実態に合った計画検討など段階的プロセスを踏んでいくことが特徴です。

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タクティカル・アーバニズムのサイクル Figure by Rui ISUMIYAMA

タクティカル・アーバニズムの概念を表現した上の図に従って、どのようなプロセスを踏むのか、今回の各講義が、それぞれどこの位置付けに当たるのかの説明を受けました。

初回のこの日は「学習」と「アイデア」のタームです。その後の講座を通してアイデアを構築、実際にプロジェクト(アクション)として形にし、その効果を計測しデータ化する。この循環を回すことで、タクティカル・アーバニズムの作法を一周できるのです。

その場限りで終わらせない、重要なのは長期展望

ここまででタクティカル・アーバニズムとは何か、今後の手順への理解を深めた後は、泉山さんが講義を引き継ぎます。タクティカル・アーバニズムを日本で実践するにはどうすれば良いのか、具体的な公共空間の事例を挙げながら説明します。

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真剣に講座を受ける受講生のみなさん Photo by Marin HARA

「みなさんはこの講座で、タクティカル・アーバニストかタクティシャンを目指してください!」

泉山さんはそう切り出しました。そして日本の公共に対する意識の変化などを絡めつつ、下北沢の高架下の暫定施設「下北沢ケージ」や、第2回の講師である天野裕さんが手掛ける、愛知県岡崎市の乙川プロジェクトなどを紹介。また、アクティビティ調査については、2017年2月のソトノバアメリカ視察や、ゲール事務所の取り組みなどを説明しました。

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Say! #タクティカル #タクティカルアーバニズムを進める泉山さん Photo by Marin HARA

そして、この後のアイデア出しの参考になるような、海外でのタクティカル・アーバニズムをいくつか例示。実践する際のポイントとして、ロングタームを考えることが必要と強調しました。小さなアクションの積み重ねが、ロングタームアクションに結び付くように設計してこそのタクティカル・アーバニズムです。

そして、泉山さんはまずはSNSで、「タクティカル・アーバニズム」の拡散を呼び掛け。 #タクティカルアーバニズム と言いましょう!というと、会場から「おお〜」との声が上がりました(ハッシュタグは「・」が入ると切れてしまうのでご注意!)。

泉山さんの講義後には、参加者からの質問が相次ぎました。

「タクティカル・アーバニズムがなぜ都心で起こりやすいのか?」→「エリアマネジメントによる公共空間が使用しやすい、イベントになりやすい」、「なぜ日本であまり公共空間が使用されないのか?」→「公共空間における私権やアクティビティ、文化活動を制限するに至る黒歴史を抱えている」など、核心を突く質問も多く、受講者のレベルの高さを感じました。

丸の内仲通りでアイデアを現実に!

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熱心にメモを取る受講生 Photo by Yuria KANEDA

徐々に公共空間の具体的な使用に目が向いてきたところで、講座の目玉である、丸の内仲通りでのアクションプランについて説明です。荒井さんが、制限事項やヒントを話します。

「真夏、暑くて外に出たくない」、「道路がわくわくする」などのキーワードを基に、実際の道路にあるものを使った例などを示しました。

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盛り上がるグループワーク Photo by Marin HARA

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発表の様子 Photo by Yuria KANEDA

その上で、4つのチームに分かれ「何をやりたいのか」 のチームの方向性を決めてもらいました。

初対面の人が多かったですが、かなり盛り上がり、各チームごとにアクション・プログラムに向けて何をやりたいのか、熱い議論を交わしました。アクションの企画をまとめるまでのスケジュールがタイトなこともあって、参加者の集中力には眼を見張るものが! 20分後、各チームごとに発表し、お互いの方向性を確認し合いました。

同じ講座を受けたはずなのに様々な意見が出てきて、実践に向けてどのようなことが起きるのかとても楽しみです。6月7日開催のソトノバTABLEでは、各チームからでた案をブラッシュアップして発表します。

ドリンクを交えてさらに弾む議論、今後が楽しみ

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食事とお酒片手に議論が盛り上がります Photo by Yuria KANEDA

2時間の講義が終わり、交流会です。お酒も入り、初回とは思えないほど非常に盛り上がりました。このメンバーで7月まで頑張ろうと、一致団結。

素敵なメンバーが多くそろっていて、今後の講義はもちろん、実践編でのアクティビティもどのようになるのかとても楽しみです。

前述の通りスピンオフ企画として「タクティカル・アーバニズムのはじめ方」を6月7日に開催します。こちらは本講座の受講生以外の方でも参加できますので、講座で出たアイデアや、この記事を読んで気になることがあったら、どうぞご参加ください。

詳しくはこちらから。
【6/7】「タクティカル・アーバニズムのはじめ方」ソトノバTABLE#17(JSURPまちづくりカレッジスピンオフ企画)

JSURPまちづくりカレッジ2017前期課程プログラム
「タクティカル・アーバニズムの作法」

特設サイト

受講料 一般15,000円、学生5,000円
制作費 1人5,000円
プログラムと日程 5月23日(火)「タクティカル・アーバニズムの概念とプロセスを学ぶ」
講師:荒井詩穂那(首都圏総合計画研究所)、泉山塁威(東京大学先端科学技術研究センター助教)
6月13日(火)「経験者から学ぶタクティカル・アーバニズム」
講師:天野裕(岡崎まち育てセンター・りた事務局長、チーム・おとがワ!ンダーランド事務局)
6月26日(月)「デザインから学ぶタクティカル・アーバニズム」
講師:水野大二郎(慶應義塾大学環境情報学部准教授、DESIGNEAST実行委員)
7月3日(月)「アクティビティ調査手法とまとめ方」
講師:三浦詩乃(横浜国立大学都市イメベーション研究院助教)、泉山塁威(前掲)
7月23日(日)「タクティカル・アーバニズムのアクションとアクティビティ調査の実践」
7月25日(火)「パブリックスペース改善提案─グループ成果発表と講評─」
講評:藤井宏章(NPO法人大丸有エリアマネジメント協会事務局長、三菱地所開発推進部)
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金田 ゆりあ

金田 ゆりあ

慶應義塾大学総合政策学部在学中。水野大二郎研究室所属。卒業プロジェクトでは、人口減少社会での縮小型都市の在り方として、市民主体で空き家を壊すことをテーマに研究中。新たな建築として、壊す建築が何を生み出すのか日々模索しています。