広がるソトでのシネマ体験、品川シーズンテラスにプレイヤーが大集結! 「Open Theater Summit vol.1」

「ここ数年、河川敷や芝生の公園、野球場など、屋外での映画上映イベントが増えているような気がする……」。もしこう思っている方がいたら、それは正解です。

映画館以外の場所での映画上映、通称「ポップアップシアター」。実は専門の映画館が普及する以前は、一般的な上映スタイルでした。そして最近では、その中でも屋外で開催する「オープンシアター」が盛り上がりを見せているというのです。

屋外(ソト)と聞いて黙っているソトノバではありません。その熱気が実感できるイベントに参加してきました!

古くて新しい、シネマ創世記の映像体験

「オープンシアター・サミット」と銘打ったこのイベント。2016年12月21日、品川シーズンテラスのカンファレンスホールで第1回が開催されました。会場には映画好きや、自分でも上映会を開催したいという人など100人近い参加者が集まりました。ちなみにこの品川シーズンテラス、2015年に開業した超高層の複合施設で、足元にある約3.5ヘクタールに及ぶ広大な緑地が魅力です。

高層棟の3階にある会場から、北側に隣接する芝生広場が見えました。正面には東京タワーも! Photo by Tomoyuqui HIGUCHI

イベントの第1部では「ポップアップシアターSHOWCASE!」と題して8組がプレゼンテーション。第2部の「ポップアップシアターTALK!」では、6人のゲストが6人のゲストがトークを展開しました。

会場には、「Do it Theater」による手づくり電飾サインが持ち込まれ、雰囲気を盛り上げます Photo by Tomoyuqui HIGUCHI

第1部の出演者は、大きく「オーガナイザー」と「場所の運営者」に分かれます。オーガナイザーは映画配給会社との交渉やプロジェクターの手配、集客のノウハウ提供などに力を発揮。一方の場所の運営者は、イベント会場となる屋外空間などを管理・運営する立場です。実際のプレゼンの順序とは異なりますが、まずはオーガナイザーから紹介していきましょう。

Do it Theater

2014年10月の浜松での開催を皮切りに、駐車中の車の中から見る「ドライブ・イン・シアター」形式での上映を主に手掛けています。2016年、品川シーズンテラスの芝生広場で2回開催した「品川オープンシアター」のプロデュースも担当。

登壇したDo it Theater代表の伊藤大地さんは、「その日、その場所でしか体験できない感動を伝えたい」と想いを話しました。

2016年9月に第1回を開催した「品川オープンシアター」 Photo by Do it Theater

ねぶくろシネマ

2015年12月に多摩川の河川敷で、京王線の橋脚に映写するアウトドアスタイルで開催したのが最初。「映画×アウトドア×ファミリー」をコンセプトとして、上映中に「声を出してもいい」というルールが特徴です。東京・調布市のお父さんたちが立ち上げたまちづくり会社「パッチワークス」が企画しています。

調布市は映画の撮影所や映像関連の企業が集まっていることから、「映画のまち」として観光に力を入れています。しかし肝心の映画館が市内になく、市民が身近で映画に親しんでいるとは言いづらい状況でした。そこでパッチワークスでは、親子連れでも楽しめるスタイルでの映画体験を発案。調布市の関係者も巻き込んで、河川敷での上映を実現しました。

以降、1年間で7回の上映を実施しています。野球場で「フィールド・オブ・ドリームス」を上映するなど、その場所に合わせた映画を選ぶことで、子供たちの記憶に残る体験を提供しています。

Kino Iglu(キノ・イグルー)

2016年で活動13年目を迎えた老舗ユニット。東京を拠点に、全国各地のカフェや雑貨屋、美術館など様々に空間に、映画を届けています。

東京・目黒のホテル「CLASKA」の屋上での上映会は9年続いています。ルミネ立川やルミネ荻窪、上野の東京国立博物館、横須賀市の横須賀美術館などでも、屋外での上映を定期的に実施。こうした施設での映画体験を、毎年楽しみにしているファンも多いそうです。

オレンジフィルムフェスティバル

ここまでほとんど首都圏の事例でしたが、こちらは地方でのイベント。愛媛県の農林水産物をPRする目的で、過去2回を県内の海岸で、2016年は松山市の中心街で開催しました。屋外上映だけでなく、熱気球の体験やサーカス団による演出、音楽やダンスのステージなど、総合的なフェスティバルです。

制作を手掛けているのは、プロモーションやイベントなどを総合的にプロデュースする東京の会社。代表の灘野博史さんが愛媛県の出身で、相談を受けたのがきっかけだそうです。「地方の魅力を再認識してもらうために、松山城とのコントラストなど、周囲の風景との組み合わせを意識しています」と灘野さんは説明しました。

愛媛県でこれまでに3回開催した「オレンジフィルムフェスティバル」  Photo by Tomoyuqui HIGUCHI

場所のファンづくりに有効な屋外シアター

こうしたオーガナイザーの活動が広がってきた陰には、会場となる場所の協力が欠かせません。施設や周辺エリアのイメージアップを主な目的として、オープンシアターを積極的に誘致する施設も出てきました。そういった場所の運営者を紹介します。

品川オープンシアター

今回の会場である「品川シーズンテラス」のエリアマネジメント事業としての位置付けで、16年の9月と10月の2回、屋外上映を開催しました。企画には前出のDo it Theaterが協力しています。

シーズンテラスでは広い緑地を生かして、春には花見、夏にはウォータースライダー、クリスマスにはライトアップなど様々なコンテンツを実施しています。屋外での映画上映もその1つ。しっかりと管理された場所なので子供を安心して遊ばせることができると、周辺のマンション住人に段々と認知が広がっているそうです。

恵比寿ガーデンプレイス「Picnic Cinema!」

夏のイベント「恵比寿ガーデンピクニック」の目玉企画の1つとして、週末の3日間、3週間にわたり計9作品を上映しています。20フィートのコンテナを2つ使ったスクリーン、人工芝を敷いて寝転べるようにした空間に、500人から600人が集まりました。

恵比寿ガーデンプレイスの中庭で映画観賞 Photo by Tomoyuqui HIGUCHI

キノ・イグルーがプロデュースに入り、恵比寿ガーデンプレイスを管理するサッポロ不動産開発のチームと一緒になって実施しています。

天王洲キャナルフェス

主催は一般社団法人天王洲・キャナルサイド活性化協会。天王洲に本社を構える寺田倉庫が音頭を取って、運河沿いの建物の壁面に映像を投影します。2016年の夏と秋に開催しました。秋開催は10月末、「スーパーハロウィン」とのタイトルで、水上パレードや船上ライブ、マルシェ、ワークショップなど多彩な内容です。

次回は2017年の春、4月7日から9日の3日間を予定しているとのことです。

上映イベントのハードルを下げる仕組みも

イベントとして映画を上映する際に、課題となるのが映像の権利処理です。通常は配給会社を通して映像を借りるのですが、入場料金や人数などの条件によって利用料はまちまちで、それなりの人数を集客しないと赤字になることも。

こうした状況に風穴を開けて、自主上映のハードルを下げるシステムの開発が進んでいます。クリエイター向けのクラウドファンディング「MotionGallery」代表の大高健志さんと、日本仕事百貨や清澄白川のコミュニティー施設「リトルトーキョー」を手掛けるナカムラケンタさんの共同プロジェクト、その名も「popcorn」です。当日は大高さんが登壇しました。

popcorn

2017年春の本格スタートを目指す、登録制の映画配信システム。16年12月から試験運用が始まっています。入場者数に対して使用料が発生する枠組みなので、オープンな環境での大規模な上映は残念ながら不向きとのことですが、カフェや小規模なイベントスペースなどで定期的な上映会を可能にします。

現在、リトルトーキョー内に「popcorn」システムを使った実験の場として、自主上映者や映画関係者が集まり、コミュニケーションしたり、自主上映について学んだりする施設を計画しています。MotionGalleryでクラウドファンディングを実施中なので、気になった方はチェックしてみてはいかがでしょうか。

ソトノバでもやりたい!

映画館での上映ではなく屋外のイベントとすることで、普段と違う客層が集まったり、参加者同士がつながったり、思い出に強く残ったりする。それがオープンシアターの醍醐味であり、意義であると言えるでしょう。

マイナーな良作映画を広めたいという思いや、新しいコミュニケーションのためのツール、まちおこし活動の一環、埋もれてしまった映画文化を再起動したい──屋外での映画上映という手段こそ共通しているのですが、立ち位置や動機はプレイヤーによって様々だったのも面白い発見でした。これだけ幅広い活動が成立するのも、映画というフォーマットが持つ魅力や懐の深さがあればこそ、と思います。

またトークの中では、「2014年頃から潮目が変わってきた」、「まったく異業種からの打診が増えてきた」、「地方からの引き合いが強くなっている」というコメントもありました。今後のオープンシアターの一層の広がりにも期待が持てます。

ソトノバの2017年の目標の1つに、「ソトを使ったシアターイベントの実現」が加わった夜でした。


Open Theater Summit vol.1「これからのポップアップシアターを考える」 hosted by Shinagawa Open Theater

【日時】
2016年12月21日(水)
18:30〜22:00(開場18:30、本編開始19:15)

【タイムスケジュール】
18:30 受付開始
19:15 START・イントロダクション
19:30 第1部 「ポップアップシアターSHOWCASE!」
20:30 第2部 「ポップアップシアターTALK!」
21:30 第3部 「ポップアップシアターMEETUP!」

【参加費】
1,500円(軽食、ドリンク付き)

【第1部 SHOWCASE!参加団体(発表順)】
Shinagawa Open Theater(品川シーズンテラス)
ねぶくろシネマ(合同会社パッチワークス)
ORANGE FILM FESTIVAL(株式会社アンカラードジャパン)
恵比寿ガーデンピクニック「Picnic Cinema!」(サッポロ不動産開発株式会社)
popcorn(株式会社MotionGallery)
Do it Theater(株式会社ハッチ)
Kino Iglu
天王洲キャナルフェス(一般社団法人天王洲・キャナルサイド活性化協会)

【第2部 TALK!参加メンバー(敬称略)】
・有坂 塁(Kino Iglu)
・伊藤 大地(Do it Theater)
・内山 武士(NTT都市開発)
・大高 健志(MotionGallery)
・唐品 知浩(パッチワークス)
・矢部 紗耶香(atmos films)
・植原 正太郎(司会、NPO法人グリーンズ)

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樋口 トモユキ

樋口 トモユキ

ソトノバ副編集長/修士(建設工学, 都市工学) 建築専門誌の記者から転身、ドラマチックに合流する。愛知県名古屋市出身、東京都中野区東中野在住。東大まちづくり大学院1期生。人々が集まり営む都市というものに対する飽くなき好奇心を胸に、新たな発見を求めて夜な夜な街に繰り出す。キューバ渡航歴6回、東京都公認ストリートライブのライセンスを持つラテンパーカッショニスト。座右の銘は「君子豹変す」。